本年度は引き続きLPS誘導性SIGIRR発現調節機構の解明を行った。昨年度の検討では、RAW264.7および好中球様HL60細胞において、LPSがその受容体であるTLR4および下流のp38MAPキナーゼを介してSIGIRR発現量を低下させることを確認した。そこで次に、LPSによるSIGIRR発現低下が転写レベルで起きているか確認するために、LPS刺激によるヒトSIGIRRプロモーター活性への影響を検討した。NCBIデータベースから、ヒトSIGIRR遺伝子には3種類のバリアントの存在が推測された。予備検討の結果から、好中球様HL60細胞のSIGIRR発現はほぼ100%バリアント1遺伝子に依存することを確認したため、バリアント1遺伝子から推測されるプロモーター領域をHL60細胞からクローニングし、実験に使用した。その結果、LPS刺激によりSIGIRRのプロモーター活性が顕著に減少した。次にSIGIRRの発現維持に重要なプロモーター領域を特定するために、deletionおよびpoint mutationコンストラクトを作製し検討を行った。その結果、-163から-172の転写因子Sp1結合領域と推定される箇所がSIGIRR発現に重要であることが明らかとなった。この結果は、Sp1結合阻害薬であるミスラマイシンA処理によってSIGIRRのmRNAおよびプロモーター活性が減少するという結果とも一致した。更に、このプロモーター領域へのSp1の結合にLPSが影響を及ぼすのかChIPアッセイを用いて検討したところ、LPS刺激によってSp1の結合が減少した。これらの結果から、LPSによるSIGIRR発現抑制はTLR4下流のp38および転写因子Sp1を介する可能性が明らかとなった。今後はヒト検体細胞を使用した検討とp38とSp1間の制御メカニズムの解明を中心に行う予定である。
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