【目的】著者は先行研究で、咀嚼力育成には野菜の摂食頻度を高め、食に対する期待感を持てる食環境の整備の重要性を示した。教育現場では、積極的に歯科保健教育や食育で、咀嚼の重要性を指導している。しかし、加齢に伴い咀嚼の有効性は理解するが、噛む意識は低下する実態がある。本研究では、咀嚼力と日常の摂食行動時における咀嚼に対する意識と基本的生活習慣について調査し、咀嚼力との関連性について検討した。 【対象者および方法】近畿圏内の小学5年生から中学3年生(男子81名、女子112名、計193名)を対象に、直接的咀嚼力と自記式質問票による噛む意識および食行動について調査した。 【結果】小学5-6年生(N=106)の咀嚼力は53.2±7.9%、中学1-3年生(N=87)は61.5±5.9%であり、中学生は小学生に比べ有意に高値を示した。次に、食育および生活習慣を良否の2群に分け、咀嚼力との関連性について検討したところ、小学5-6年生群では、「硬いものを噛んで食べることができるか」の問いに「よく噛める」と答えた者の咀嚼力が有意に高値を示し、中学1-3年生群では朝食の摂食頻度が週に3回以上食する群は咀嚼力が有意に高値を示した。 【考察および結論】本研究結果より、咀嚼力は成長に伴う向上が認められた。これは、第二大臼歯の萌出に伴う咬合面積の増加によるものと推察される。小学生では噛む意識と咀嚼力、中学生では朝食の摂食頻度と咀嚼力が有意な関連性を示したことから、児童生徒の咀嚼力の育成には、食に対する関心を高め、咀嚼の重要性とその効果を理解させ、食生活でよく噛んで食する保健指導の実践が有効であると推測された。さらに、朝食が摂取できる食環境整備の重要性から、得られた情報を保護者に広く提供し、家庭での協力を促す積極的な支援が必要であると考える。
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