本年度は、栄養センサーといわれるmTORとそのmTORの作用調節に大きく関わっていると考えられる分子Rhebのトランスロケーションモデルを確立した。アミノ酸によるhVps34の活性化がRhebによるmTOR活性化を生じさせるエンドソームトラフィッキングの重要な調節因子と考えており、Rhebが細胞膜上に局在することを確認している。mTORはゴルジに局在することから、このRhebの局在が下流へのアクセスとなると思われる。手法として以下の3方法を用いた。(1)リアルタイムの蛍光顕微鏡を用いたEGFP融合タンパクの利用、(2)コンフォーカル顕微鏡を用いた内因性に存在するRheb/mTORの免疫染色、(3)細胞膜のフラクション。(1)はまず、Rheb分子にEGFPを融合させ、このDNAをHEK293細胞にトランスフェクションした。二日後に蛍光顕微鏡下にて細胞をアミノ酸刺激、グルコース刺激、インスリン刺激し、そのトランスロケーションを観察し、映像として記録した。(2)内因性に存在するRheb/mTORについてはコンフォーカル顕微鏡にて抗Rheb抗体、抗mTOR抗体を用いて免疫染色した。さらにアミノ酸等で刺激した細胞より細胞膜を抽出し、このフラクションをとることで、刺激によってRhebが膜上から細胞質に移動することを確認した。以上より、細胞膜をRhebのトランスロケーションがmTOR活性化を引き起こし、mTORがS6K1を活性化するために核から細胞質へとエクスポートされることが示唆された。
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