本年度の研究成果として、まずGATA1とRunx1の発現を同時にモニタリングできるES細胞株を樹立した。Runx1遺伝子座にVenusを導入したES細胞株にGATA1-HRDの下流にhumanCD25をつないだトランスジーンを遺伝子導入することにより目的のES細胞株(RVG25)を樹立した。また同時にタモキシフェンによりCreの発現がコントロールできるGATA1-IRES-Mer-Cre-Merノックインマウス作成用のES細胞も樹立し、現在インジェクション中である。RVG25細胞株を用いたES細胞分化誘導系において、分化誘導4〜6日目のRunx1+/VE-cadherin+細胞集団中にB細胞分化能を有する細胞が多く含まれていることを明らかにした。一方、Runx1-/VE-cadherin+細胞集団からはB細胞が分化してこなかった。このことから血液細胞と内皮細胞への分化は発生の初期段階で分岐していることとともにRunx1の発現によりhemogenic ECとnon-hemogenic ECとに分けることができることが示唆された。また、E7.0-E8.0embryo中のVE-cadherin+細胞がOP9を用いたB細胞分化誘導系によりB細胞分化能を有することを明らかにした。今までのところ、ES細胞分化誘導系、E7.0-E8.0embryoのどちらにおいても、VE-cadherin+細胞以外の細胞からはB細胞分化能を確認できていない。最後に、GATA1+/VE-cadherin+細胞が成体型造血に貢献しているかどうかを検討するためGATA1-CreトランスジェニックマウスとRosa26(R26R-eYFP/R26R-eYFP)マウスとの交配実験行ったが、GATA1-Creトランスジェニックマウスの発現制御不備のため実験を中止した。本年度の研究は来年度の研究の基盤となるものであり、十分な成果が上げられた。特に、発生初期(E7.0-E8.0)のembryo中にリンパ球分化能を有する細胞がVE-cadherin+細胞集団中にのみ存在しているということを明らかにした研究成果は当該分野において大変重要な意味をもつものである。
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