本年度は、軸索の伸長方向を制御する新規リゾリン脂質LysophosphatidylGlucoside(Lyso-PG)の受容体の探索を目的として研究を行った。本研究ではリゾリン脂質が媒介する軸索ガイダンスの生理的意義を示すことを目的としている。その中で、Lyso-PG受容体の同定は、遺伝学的アプローチが困難な脂質分子の解析において、受容体ノックアウトマウスを作製しLyso-PG-受容体シグナルの個体レベルの機能解析を行い神経回路形成におけるそれらの生理機能を明らかにしようとする上で極めて重要である。Lyso-PGによる軸索反発活性が百日咳毒素により消失することからLyso-PGがGαiと共役するGタンパク質共役型受容体(GPCR)であると予想されること、さらにLyso-PGによる軸索反発活性に対しTrkA陽性DRG神経細胞は感受性を示すが、TrkC陽性DRG神経細胞は感受性を示さないことから、Lyso-PGに対する受容体はTrkA陽性神経細胞に発現しTrkC陽性神経細胞に発現していないことが予想された。そこでTrkA、TrkC陽性の両神経細胞からmRNAを回収し、約300種類のGPCRプライマーカセットを用いて、定量的RT-PCRを行った。その結果、TrkC陽性DRG神経細胞に比べ、TrkA陽性DRG神経細胞に優位に発現し、さらにアミノ酸配列の相同性から脂質分子をリガンドとするファミリーに含まれるGPCRを2種類同定した。これらの受容体のうち、1つはリガンドが同定されていないOrphan-GPCRであった。同定したGPCRについて、TrkC陽性DRG神経細胞に当該遺伝子を導入しLyso-PG感受性を示すかを確認するため、レンチウィルスを作製した。現在DRG神経細胞へウィルス導入法の検討を行っており感染効率の改善を図っている。
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