(1)シータ構造型とRC型の2つのDNA複製モードを同時に検出する無細胞HPV DNA複製系の構築 昨年度に調整した基質DNA(HPVの複製起点を含む環状DNA)とDNA複製用に調製したW12細胞(HPV16をエピソームとして維持する上皮細胞)抽出液を用いて複製反応を行ったところ、両モードの複製産物が同時に検出できた。つまり、2つのDNA複製モードを同時に検出する無細胞HPV DNA複製系を構築することができた。この系を用いて(i)上皮細胞の抽出液では分化誘導に関わらず、RC型とシータ構造型の複製産物が生成されること、(ii)基質にnickを導入することで、RC型の複製産物が増加することを見いだした。また、(iii)W12細胞の代わりに胎児腎293細胞の抽出液を用いると、シータ構造型の複製産物のみが生成されることがわかった。 (2)DNA複製モード切換えに関わるタンパク質の検索 当初の予想に反して、(1)で述べたように、上皮細胞を分化させることでその抽出液におけるRC型複製産物が増加するという結果にはならなかった。しかし、RC型複製産物は上皮細胞抽出液に特異的であったことから、W12細胞抽出液にはシータ型からRC型複製モードへの切換えに関わる分子が存在する可能性、または293細胞ではRC型複製が抑制されている可能性がでてきた。そこで、W12細胞抽出液を用いた(1)の系に293細胞抽出液を加えると、シータ構造型複製産物には変化がみられなかったが、RC型複製産物が減少した。このことから、293細胞にはRC型複製を阻害する因子が存在することが示唆された。
|