近年の諸外国における縦断的疫学研究によって、精神病様症状体験(Psychotic-like experiences ; PLEs)を有する思春期児童の後の精神病性疾患の発症リスクが高いことが明らかとなっている。ただし、思春期地域標本を対象とし、PLEsの持続性を検討した研究は少ない。本研究では、思春期の中学生約250名を12ヵ月間縦断的に追跡し、PLEsを持続して体験している者の頻度、およびその特徴についての検討を行った。調査協力校の中学1・2年生254名を対象として平成20年12月にベースライン調査を実施し、12ヵ月後の平成21年12月に転帰調査を行った。いずれも質問紙法によって行った。過去6ヵ月間にPLEsを体験していた生徒はベースライン調査時では7.3%、転帰調査時では8.3%存在した。ベースライン時のPLEsは、12ヵ月後の転帰調査時のPLEsを有意に予測した(OR=3.7 95%CI 1.1-12.4)(持続群18.2%)。さらにベースライン時の「苦痛感を伴う」PLEsは、12ヵ月後の「苦痛感を伴う」PLEsを高率に予測した(OR=5.8 95%CI 1.1-30.7)(持続群19.0%)。以上の結果から、過去6ヶ月間にPLEsを体験している思春期児童、特に「苦痛感を伴う」PLEsを体験している思春期児童は、12ヵ月後もPLEsを持続的に体験しているリスクが有意に高いことが示唆された。
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