節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型(以下ENKTL)は欧米での頻度が少ないことや、検体の採取が困難なことから分子生物学的発がん機構は現在でも不明な点が多い。そこでわれわれは、ENKTLの細胞株および臨床検体を用いて網羅的な発現解析およびゲノム異常解析を行い、発がん機構の解明を試みた。具体的には、平成20年度においては、(1)検体の収集、(2)DNAおよびRNAの抽出、(3)マイクロアレイを用いた発現解析を行った。現在の進行状況は以下のとおりである。 (1)細胞株10例、臨床検体11例の収集を完了した。 (2)臨床検体1例を除き、評価可能なRNA、DNAを抽出できた。 (3)発現解析を行いコントロールである正常NK細胞/正常T細胞と比較した。その結果、ENKTLは正常T細胞よりもNK細胞に近い性質を示し、特に活性化NK細胞に最も近い性質を示した。この結果は第67回日本癌学会学術総会において発表した。次に、コントロールである正常細胞に比べて、ENKTLの細胞株/臨床検体において有意に発現が変化している遺伝子を抽出した。また、以前に行っていたアレイCGHの結果と照合して、ゲノム異常との相関が強い遺伝子も加えて抽出した。これらの発現の変化を確認するため、現在まで約20個の遺伝子についてRT-PCRを行ったところ、いずれの遺伝子も発現解析の結果と強い相関を示した。 次年度は、これらの結果をもとに機能解析を行い、発がんに重要な遺伝子を確定していく予定である。
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