研究課題
本研究は、疾患や治療目的、蛋白質の作用機序に応じて、特定蛋白質や特定レセプターに対する選択的結合能とアンタゴニスト活性を併せ持つ機能性人工蛋白質を薬物として応用し、治療効果の検討を通じて、画期的自己免疫疾患治療薬の開発に資することを目的とするものである。これまでに我々は、リウマチや多発性硬化症といった自己免疫疾患の発症や悪化に関わると考えられている腫瘍壊死因子(TNF)に着目し、その2種類の異なるレセプター(TNFR1およびTNFR2)のうち、特に炎症反応の惹起に深く関わるTNFR1に選択的結合能を有した構造変異TNFアンタゴニスト(RlantTNF)を創製することに成功している。また、近年の動物モデルを用いた検討から、多発性硬化症においてTNFR2が病態の寛解作用に関与することが示唆されており、TNFR2を介した作用を確保したままTNFR1の作用のみを選択的に阻害することが、新たな治療戦略として考えられる。そこで本年度は、RlantTNFの多発性硬化症のマウスモデルに対する治療効果を評価することで、新規自己免疫疾患治療薬としての可能性を検証した。なお実験には、体内安定性を向上させる目的で高分子修飾(PEG化)をしたPEG-RlantTNFを用いた。実験的自己免疫性脳脊髄炎を発症させたマウスにPEG-RlantTNFを投与したところ、PBS投与群と比較してクリニカルスコアが低くなる傾向が認められた。既存のTNF阻害薬は多発性硬化症患者に禁忌に指定されているが、TNFR1選択性を付与したRlantTNFは、病態を悪化させることなく、症状を緩和させる可能性を示したことから、多発性硬化症患者にも適用可能であり、TNF阻害薬の自己免疫疾患治療薬としての適用範囲拡大に繋がるものと期待される。
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