研究概要 |
プロトン-電子混合伝導性を示すセラミックスは, 水素分離膜や燃料電池用電極材料としての応用が期待されている。しかしながら, これらの工学用途の運転条件である高温水素還元性雰囲気下において混合導電性を示す材料はほとんど報告例がない。本研究では, 希土類オキソ酸塩の複合化により新規高性能プロトン-電子混合伝導体を開発することを目的とした。前年度には, セリウムオルトリン酸塩CePO_4を母体としたプロトン-電子混合伝導体の開発に成功したが, この系ではプロトンあるいは電子による導電の寄与が使用条件によって決定され, これらを制御することが困難であった。これを踏まえ今年度は, 申請者等によって見いだされた希土類オルトホウ酸塩系プロトン伝導体あるいは電子伝導体を複合化し, 個々の材料の持つ機能性を調和的かつ協奏的に発現させることにより, プロトンあるいは電子が伝導に及ぼすそれぞれの寄与を制御したプロトン-電子混合伝導体を開発することを目指した。その結果, LaBO_3とCeBO_3の複合体が水素還元性雰囲気においてもプロトン-電子混合伝導体となること, 両者の混合比を変えることによりプロトンあるいは電子電導性の寄与が変化すること, が分かった。さらに, 同材料における各導電種の伝導メカニズムについても検討し, プロトン伝導は結晶中に溶解したプロトンが結晶格子内を移動することにより, 一方, 電子電導性は混合原子価状態にあるCeイオンが形成する導電パスを移動することにより生じることを明らかにした。以上の結果から, 希土類オキソ酸塩の複合化により, 各導電種による寄与を制御したプロトン-電子混合伝導体を開発できることが示された。本研究の成果は, 水素分離膜や燃料電池用電極材料など工学的用途に応じた特性を有するプロトン-電子混合伝導性セラミックス創製のための, 新たな材料設計指針と言える。
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