申請者はこれまでに、配位高分子であるLa[Fe(CN)_6]・nH_2Oは、LaとFeがシアノ基で架橋された三次元ネットワーク構造を有しており、熱分解によってサブミクロンサイズの孔が規則的に配列したペロブスカイト型酸化物LaFeO_3になることを見い出している。これに対して、従来からの一般的なLaFeO_3の調製法である共沈法や固相反応法では、そのような多孔質酸化物が得られない。本研究では、これらの結果をさらに発展させて、「配位高分子を前駆体とするd-f元素系多孔質複合酸化物の合成・形態制御」と「触媒特性」を詳細かつ系統的に調べ、従来法との比較をした。また、調製したLaFeO_3にPdのような貴金属を担持したものについても触媒特性を調べた。その結果、つぎのようなことがわかった。 (1) 配位高分子、La[Fe(CN)_6]・nH_2O、を熱分解すると350℃以上で単相のLaFeO_3が生成し、孔が規則的に配列した多孔体となり、分解温度の上昇とともに孔サイズが大きくなり、1000℃では100〜200nmの径を有する孔が規則配列したものが得られた。従来の固相反応法や共沈法では、1000℃でも単相のLaFeO_3が得られず、孔の規則配列も観測されなかった。 (2) 本法で調製したLaFeO_3を触媒としてメタンの酸化反応を行った。その結果、メタンの反応率は、固相反応法によって調製したLaFeO_3を用いた場合よりも若干高い程度であったが、共沈法で調製したものを用いた場合よりもかなり高かった。 (3)本法で調製したLaFeO_3を(NH_4)_2[Pd(C_2O_4)_2]・nH_2O水溶液に含浸することによって、Pdを担持したPd/LaFeO_3を調製することができた。このPd/LaFeO_3を触媒としてメタンの酸化反応を行った結果、Pd担持量が増えると反応率が高くなった。しかしながら、単純な含浸法だけでは固相法や共沈法により調製したLaFeO_3に比べると、Pd担持量がかなり少なかった。
|