研究概要 |
LiNbO_3(LN)は優れた圧電性、電気光学特性を持つ強誘電材料として知られており、光導波路などに利用されている。本研究では光変調器への応用をめざし、LNの圧電性とErのフォトルミネッセンス(PL)発光特性を組み合わせてErのPL発光の制御を試みた。また、我々が開発している大きな自発分極を有する新しい強誘電体・圧電体であるBiFeO_3(BFO)についても、同様のEr添加を試みその発光特性を調べた。実際には、パルスレーザアブレーションによる薄膜堆積法(PLD法)によってErをドープしたEr : LN薄膜を作製し、それに平行平板型電極やサンドイッチ型電極を形成し、直流あるいは交番外部電界を印加してPLの変化を測定した。 その結果、平行平板型電極を用いてEr : LNにおいて外部電界を印加することによって、PLの強度の増加を確認した。さらに、交番電界印加によって、PL強度の外部電界変調スペクトルの測定に成功した。しかし、このPL変調スペクトルは印加電界周波数の上昇に伴い、スペクトル強度の急激な減少が生じた。これは電界の変化に対するPL強度変化の応答が遅く、周波数が増加すると電界の変化にPL強度の変化がついていけなくなるためだと考えられる。そこで、サンドイッチ型構造でもリーク電流が抑制され、良好な強誘電特性が得られているNd,Mn共添加BFO薄膜へのEr添加を試みた。Er添加BFO薄膜(Nd,Mn無添加)のPLスペクトルを測定したところ、LN薄膜と同等のPLスペクトルを得ることに成功した。しかし、リーク電流の抑制のためのMnを添加することにより、PL強度の大きな減衰が観測された。これはErのPL発光がホストの磁気特性の影響を受けていることを示唆している。
|