研究概要 |
Nd-Fe-B系異方性厚膜磁石の創成 Nd_<2.4>Fe_<14>B+Ga_<0.5at.%>ターゲットを用いて異方性厚膜磁石を作製した。Ga添加により, その保磁力は100kA/m程度増加し, 600kA/mを超える値が得られた。加えて、残留磁化値も0.76から0.98Tへ向上し, Ga添加はNd-Fe-B系異方性厚膜磁石の磁気特性向上に有効であることが明らかとなった。さらなる磁気特性向上を目的とし, Nd量の異なるGa添加ターゲット(Nd_xFe_<14>B+Ga_<0.5at.%>, x=2.0, 2.4, 2.6)用い同様な実験を行った。Nd量の増加に伴い保磁力は増加し, 前節で述べた無添加ターゲット(Nd_<2.4>Fe_<14>B)で作製した試料の保磁力値200kA/m程度を大幅に上回ることが確認された。Nd_<2.6>Fe_<14>B+Ga_<0.5at.%>の組成を有するターゲットを用いた際に, 垂直方向の残留磁化0.95T, 保磁力876kA/m, (BH)_<max>146kJ/m^3の最も優れた磁気特性が得られた。この値は, Ga添加なしの磁石における(BH)_<max>値の約2倍の値である。 超多周期積層型Nd-Fe-B系交換スプリング厚膜磁石の創成 PLD法を用いて超多周期積層型Nd-Fe-B系交換スプリング厚膜磁石が作製できること, Nd-Fe-B/α-Fe交換スプリング膜が優れた磁気特性を示すこと, 補助レーザを利用したシステムでPLD法特有のドロップレットを削減できることが確認できたので, 本年度は, 補助レーザが磁気特性に及ぼす影響を検討した結果, 補助レーザの照射により保磁力及び(BH)_<max>の低下が生じる現象が見出された。著しい特性劣化の原因を検討するために, 膜中のNd含有量を測定した結果, 補助レーザを用いて作製した試料のNd含有量が, 補助レーザを用いず作製した試料のそれに比べて, 減少していることがわかった。この結果より, 補助レーザを用いて作製した膜ではNd含有量の減少による保磁力低下が(BH)_<max>低下の一因であると考えられる。Nd含有量が減少した原因として, ターゲット-基板間を飛行するNd-Fe-B及びα-Feドロップレットのうち前者のみ選択的にアブレーションされ, 基板以外の方向に飛散した結果, Nd含有量が減少した可能性が考えられ。組成変化の補償法の検討が今後の課題として残った。
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