研究概要 |
酸素ストレージ物質の新たな応用展開として、本研究では水素生成機能の設計に着目した。CeO_2系の酸素吸蔵能を利用して水蒸気から酸素を引き抜いてH_2を生成できることを明らかにした。CeO_2系の約10倍ものO_2吸蔵量(OSC)を示す希土類オキシ硫酸塩をCeO_2と複合化することにより、酸素放出・吸蔵特性の向上ひいては水素生成効率の向上を目指して物質設計を検討した。オキシ硫酸塩はLa-ドデシル硫酸塩層状複合体から合成し、所定量のCeO_2を含浸担持してCeO_2/La_2O_2SO_4複合体を得た。キャラクタリゼーションにはXRD, XAFS, IR/Raman, TGなどを用いた。酸素吸蔵放出反応には流通反応装置を用い、生成ガスをQ-mass, NDIR, GCで分析した。La_2O_2SO_4はCeO_2に比べてOSCは大きいが、還元性気体との反応性は高くない。複合効果が発現する機構を解明するために酸素同位体(^<18>O)を硫酸根に含むLa_2O_2SO_4を用いた酸素放出反応を試みた。その結果、La_2O_2SO_4とCeO_2とを複合化することで表面反応性に優れる酸素吸蔵物質が得られることが明らかになった。CeO_2/La_2O_2SO_4で認められる酸素吸蔵放出の促進効果はCeO_2を経由したLa_2O_2SO_4の格子酸素の放出に起因すると推定される。促進効果の発現には異種の酸素吸蔵物質界面での酸素移行が重要な因子となっている。酸素吸蔵物質の還元体とH_2Oとの反応性を高めるために触媒成分の最適化ならびに階層構造化によって水素製造法としての性能を向上することが望まれる。
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