研究課題/領域番号 |
20F20005
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
濱田 麻矢 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (90293951)
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研究分担者 |
LIN LITING 神戸大学, 人文学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 金韻梅 / アメリカ留学 / 演説 / アイデンティティ / 東西交流 / 米中関係 |
研究実績の概要 |
今年度は19世紀後半、初めてアメリカ留学を遂げた女性金韻梅について調査し、金の米中での社会活動を明らかにした。金は1896~1905年の間、アメリカ各地で演説を行い東西文化の交流に尽力したが、長い間その内実は明かさないままでいた。申請者はアメリカの新聞データベースを利用し、金の演説活動の実態を明らかにし、金のライフコースやアイデンティティの形成過程を考察した。特に、金が1906~1907年、英語で上海の雑誌『寰球中国学生報』に発表した文章As We See Ourselvesを突き止め、キリスト教を乗り越えた金の女性観を論じた。これに関連する成果として、学会報告「私たちは自分をどうみるか:金韻梅の社会活動と思想」(第三回中国国際関係女学人フォーラム、於北京外国語大学、2020年9月25日、ただしOnline参加)を行った。また、それに基づいて、論文「演説家としての金韻梅:米中で活動したニュー・ウーマン」にまとめた。 今年度は新型コロナウィルスの影響で、予定していた海外調査を実行できなかった。その代わりに、UMA(United Methodist Archives, Drew University,Madison,NJ)の司書とメールでやりとりをし、康成(Ida Kahn)の档案資料や小説を入手した。また、東洋文庫に赴き、The Chinese Students Monthlyの閲覧をし、女子留学生に関する資料を蒐集した。実践女子大学にて下田歌子に関する資料を集めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において、海外の図書館での資料蒐集や現地調査を予定していたが、COVID-19の影響で、全く実施できなかった。特に研究対象の二人、康成と石美玉は江西を活動の拠点にしていたため、現地での調査ができなかったことは残念でならない。また、COVID-19の影響で、予定していた学会は1年延期となった。幸いに、データベースやウェブアーカイブを利用し、これまで活用されてこなかった資料を入手し、金韻梅の研究を進めた。また、東洋文庫や実践女子大学にて、下田歌子と津田梅子の資料を蒐集した。康成(Ida Kahn)の档案資料を入手し、先行研究の整理を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き金韻梅について、研究を深めたい。金韻梅の文章から、同時代のアーサー・スミスが著したChinese Characteristicsに対する批判が読み取れた。これまで入手した資料に加え、清末流布した中国人論の資料を集める。ジェンダーの視点で中国人論を再考し、清末女性の異文化体験やナショナリズムの受容の仕方を探る。 また、これまで集めた資料に基づいて、留学や職業選択、シスタフードの観点から、津田梅子と康成の比較研究を進め、その成果を「キリスト教と近代中国社会」国際シンポジウム(2020年10月開催予定)に参加する。 現在COVID-19の状況に鑑みて本年度の海外調査を見合わせる。その代わりに、東洋文庫・東京国立国会図書館への調査を進める。インターネットの資源を最大限に活用したりすることを対策とする。
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