睡眠不足は、時間の認識などの認知機能を低下させる。睡眠不足の状態では、時間が過大評価される傾向がある。さらに、睡眠不足は時間知覚の概日変動に影響を与える。時間知覚は、シータ律動のような他のリズムでも変動することがある。これまでの研究では、知覚された時間は、キューからターゲットまでの間隔の関数として、シータ周波数で変動することが示された。しかし、睡眠不足が概日リズム以外のリズムの時間知覚に影響を与えるかどうかは不明である。本研究では、研究倫理委員会の承認を得て、断眠と通常睡眠前後の時間知覚を比較した。両条件とも、睡眠時間(23:00~8:00)前後のタスクで、参加者(N = 24、女性13、平均年齢25.6±3.5歳)にキーを押して3秒間の時間を生成してもらった。キュー(応答信号があることを示す)とターゲット(できるだけ早く3秒を出すことを示す)の間隔は0.25ー1.05秒、1/30秒刻みで設計した。その結果、断眠条件下では、先行研究同様、時間の過大評価が見られた。また、低シータ周波数(4.4~4.8Hz)における時間知覚の揺らぎが、断眠下で強くなることがわかった。さらに、時間知覚は非常に低い周波数で変動し、パワースペクトルに反映される場合があった。つまり、通常睡眠と比較して、断眠は、0.01ー0.04 Hzでより多くの時間知覚の変動をもたらし、逆に、0.001ー0.01Hzではより少なくなった。本研究は、時間知覚のような認知能力が様々なリズムで変動し、睡眠不足がその変動に影響を与える可能性を示唆するものである。今後はその背景にある神経生理学的なメカニズムの研究を進める。
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