研究課題
本研究では、トポロジカル物質における対称性の検出と制御に着眼し、特に時間反転対称性の破れを高感度に検出できる磁気光学カー効果の測定手法の導入とそれを用いた非自明な時間反転対称性の破れの検出を目指した研究を行ってきた。ここで、ここで、時間反転対称性が破れた状態とは、「仮想的に時間を"逆回し"にしたときに元と同じ状態とならない」場合を指し、多くは磁気秩序が生じた場合に該当する。しかし、一部の興味深い物質では、磁気的な秩序でないにもかかわらず時間反転対称性を破るという非自明な現象が起こり、基礎・応用両方の観点から注目に値する。これまでに高感度磁気光学カー効果測定手法の導入はほぼ完了し、2022年度は、カゴメ格子を持つ金属CsV3Sb5に対して行ってきた高感度磁気光学カー効果測定の研究を継続しながら、論文執筆に取り組んだ。この物質は94Kで電荷秩序、3Kで超伝導を示すが、我々は電荷秩序相において時間反転対称性が破れていることを示す結果を得た。この論文は雑誌に投稿し、プレプリントサーバーにもアップロードした(https://arxiv.org/abs/2208.08036)。その後、他のグループから異なる実験結果も報告されたため、現在は実験結果を精査し再投稿に向けて作業を進めている段階である。ほかに、CsV3Sb5に関しては、ベクトル磁場印加装置を用い、磁場方向制御下での比熱測定を超伝導状態において行った。その結果、上部臨界磁場が非自明な6回振動と2回振動を示すことを明らかにし、これは極めて特異な超伝導秩序変数の実現を示唆している。こちらについても論文を投稿中(https://arxiv.org/abs/2303.11072)である。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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