研究課題/領域番号 |
20F20050
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
PHAM NAM・HAI 東京工業大学, 工学院, 准教授 (50571717)
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研究分担者 |
NGUYEN KHANG 東京工業大学, 工学院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | スピン軌道トルク / スピンホール効果 / トポロジカル絶縁体 |
研究実績の概要 |
本研究では、スピンホール効果が極めて強いかつ高い電気伝導率を両立できるトポロジカル絶縁体をスピン注入源として使用し、超低電流密度かつ超高速な書き込みができるSOT-MRAMを実証する。トポロジカル絶縁体の巨大なスピンホール効果による磁化反転を実現できれば、MRAMの書き込み電力2桁、書き込み速度1桁、ビット密度1桁が向上でき、従来の揮発性メモリであるSRAMやDRAMを置き換えると期待できる。我々は2020年度の研究では、次の成果を達成した。 1.シリコン基板上に成膜した垂直磁化膜のCoTbフェリ磁性体/分子線エピタキシャル結晶成長法により製膜したBiSbヘテロ接合において、巨大なスピンホール効果(有効なスピンホール角3.2)の確認および超低電流密度磁化反転(世界記録の7x10E4 Acm-2)に成功し、BiSbトポロジカル絶縁体はシリコン基板上でも高いスピンホール性能を発揮できることを実証した。さらに、ホール端子幅2 μmの9 μm x 3 μmの細線において、10 nsの高速パルス印加で磁反転が確認でき、磁壁の速度が少なくても200 m/s以上高速であることを明らかにした。この研究では、BiSbはエピタキシャル膜でなくても、スピンホール層として高いポテンシャルを持つことを確認した。 2.次に量産性が高いスパッタリング法により製膜したBiSbを用いたCoTb/BiSbヘテロ接合においても、高い有効スピンホール角(1.2)および超定電流密度磁化反転(7x10E5 Acm-2)を確認した。 3. Si基板上にスパッタリング製膜したトポロジカル絶縁体BiSb/Pt/Fe面内磁化膜において、無磁場下のスピン軌道トルク磁化反転に成功した。さらに、面内磁化反転を検出するために、2次高調波ホール効果を用いた新しい検出方法を提案し、その実証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
トポロジカル絶縁体BiSbとフェリ磁性体を組み合わせることによって、世界記録の7x10E4 Acm-2という超低電流密度による磁化反転に成功した。また、主メモリの不揮発性メモリに必要な高速な書き込み(10 ns)の実証に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度には、さらに高速な磁化反転を実証するために、電子ビームリソグラフィーによる微細加工技術を用いて、300 nm程度と小さい素子を作製し、書き込み時間1~10 nsの高速な磁化反転、さらにサブnsの超高速な磁化反転の実証を行う。これにより、トポロジカル絶縁体の巨大なスピンホール効果による磁性薄膜の超高速かつ超低消費電力の磁化反転を実証し、次世代SOT-MRAMの書き込み技術を確立する。
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