本研究は、効率的運用に経験値を必要とする中間期排熱に着目し、その具体的な活用手法を提案するものであり、この研究目的の下、本年度は前年度に引き続き提案する技術開発のための理論構築とケーススタディによる効果検証を進めた。なお、本研究課題が対象とする排熱利用は、換気駆動力の増強に効果がある。この結果として、屋外が快適な空気環境条件を備えている場合に、自然換気のみで空調(冷房)を用いずに室内環境を許容できる環境内に収まる時間帯の延長を実現したい。この目標を達成するには、建物が持つ換気性能と、その結果としての実現環境を適切に予測し、換気量を制御するアルゴリズムが必要であり、そのアルゴリズムの精緻化を目指した。まず、前年度に引き続き、使用する機械学習のアルゴリズムの整理を行った。建築物の運用に機械学習を用いる場合、その建築物固有の特性に起因し、集合的に構築されたビッグデータを直接的に利用できないことがある。本研究においても、この建物固有の条件が機械学習の活用に及ぼす影響を検討し、課題が生じた場合には、その解決策を見出す必要があった。このためにも、適切な機械学習アルゴリズムの選択が重要であり、その条件を整理する作業を継続した。また、予測結果は自然換気の制御に用いられることで、建築物に実装されることになる。自然換気の運用は、換気口の開閉に伴う騒音、外部騒音の侵入、粉塵の流入等、その温熱環境の調整能力のみでなく、諸要素を加味したものである必要がある。このため、予測された結果に基づき、具体的に建物における換気口の開閉を判断するロジックの検討も進めた。
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