研究課題
マダニは吸血性の節足動物である。したがって、宿主動物の血液は、マダニ種の存続と繁栄を司る唯一無二の栄養源といえる。マダニの吸血は、ヒトや動物などの宿主の貧血、皮膚の損傷、および畜産物の生産効率に甚大な直接的被害を及ぼしており、さらにはウイルス・細菌・リケッチア・寄生虫など、多種多様な病原体を媒介することによる間接的被害をももたらす。このようなマダニとマダニ媒介感染症を未然に抑制する科学的に裏付けられた手段が、有機リンや合成ピレスロイド等の殺ダニ剤の使用であるが、殺ダニ剤の頻回投与や不適切な散布等により、現在多くの国でこれらの殺ダニ剤に対する抵抗性を獲得したマダニの出現と生息域の拡大が問題となっていることから、本研究では抵抗性形質の迅速な検出法の開発を企図する。初年度は、アミノ酸置換を伴うSNPの特定に成功したことから、本SNPを標的としたCRISPR-Cas9診断またはノックアウト技術の開発による次世代型マダニ制御技術の開発に資する知見を得ることができた。そこで、本年度はCRISPR-Cas9のフタトゲチマダニへの導入を目指し、蛍光タンパク質に卵細胞膜受容体に結合する卵黄タンパク質ペプチド断片を組込み飽血マダニの血体腔へ導入した。これにより、卵巣のみならず卵そのものへのタンパク質移行を確認することができた。今後は蛍光タンパク質をCas9タンパク質へと置き換え、殺ダニ剤標的オクトパミン遺伝子のSNP診断またはノックアウト技術の構築に結び付ける予定である。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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