研究課題/領域番号 |
20F20302
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
河野 哲也 立教大学, 文学部, 教授 (60384715)
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研究分担者 |
SHUTTLEWORTH KYLE 立教大学, 文学部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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キーワード | 環境倫理 / 風土 / 和辻哲郎 / ディープ・エコロジー / 里山 / 海洋・水系からの環境倫理 / 共生 / 人間中心主義の克服 |
研究実績の概要 |
カイル・シャトルワース氏との本共同研究の目的は2つあり、第一に、環境倫理における現在の諸問題の根本的解決策を提示すること、第二に、その解決策に日本哲学、特に和辻哲郎の哲学がどのように貢献できるのかを示すことである。この目的のため、氏は、2022年度はとくに以下の趣旨の研究を行った。1)人間中心主義の問題は、しばしば信じられているように、西洋文明に固有のものではなく、グローバルな倫理的問題であること、2)ディープ・エコロジーは人間中心主義への対応として支持されているが、彼らの東洋哲学への転向が問題のある東西二元論を保持していること、3)和辻哲郎の哲学からグローバルな生態倫理を展開する必要があるが、陸上の生息地にしか適用できないという限界があること、4)海洋の哲学的視点を探り、環境倫理において海洋が軽視されてきたことを示し、生態倫理を展開する上で海洋が重要であること、5)人間中心主義を克服し、真の倫理的生物種間相互作用に関与する手段として共生の倫理を提案すること。以上の5点から、氏は、コロナ禍で移動が制限されていた21年度の予算を繰越した分では、大学での大学院生やポスドクを交えた計6回の連続講演会(22年4月から11月まで)を立教大学でハイブリッド方式で企画実施し、環境に関して異文化間比較の視点から研究する新著を準備した。また2022年度後半、移動緩和に伴って環境問題と地域創生、環境保護のモデルとなる里山の現場を調査するために、立教大学のサテライトキャンパスのある岩手県陸前高田市とそれに近接する宮城県気仙沼市を訪問し、現地の被災と復興状況を説明するガイドツアーに参加し、両市の風土的特徴を理解した。同様に、滋賀県の琵琶湖地域(大津、長浜、米原、高島、近江など)をガイドツアーに参加して調査し、海洋と水系を中心に据える環境倫理の構築を具体化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の移動制限が2022年度、とくに後半にかけて緩和され、それまで制限されていた各地への訪問が可能になった。それまでのほぼ1年間に実施できなかった実地調査やインタビュー、対面での研究会・学会に参加できるようになり、移動訪問が必要だった研究面をかなり取り返すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度後半は、2021年度予算を使った対面での研究会や現地調査を継続しながら、そこでのデータや情報をもとに、新著の執筆と専門誌に投稿する論文の執筆など最終報告に向けて研究を進める。同時に和辻哲郎関連の日本語論文の翻訳と解説を行い、この分野の英語圏での進展に貢献する。
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