研究課題/領域番号 |
20F20326
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
辻川 信二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30318802)
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研究分担者 |
ELIZAGA NAVASCUE BEATRIZ 早稲田大学, 理工学術院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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キーワード | 量子重力理論 / インフレーション / ループ量子宇宙論 / 重力波 / 密度揺らぎ / 量子化 |
研究実績の概要 |
2021年度には,Navascues氏は,主にループ量子宇宙論が宇宙初期の物理現象に及ぼす現象に関する研究を行なった.特に,一般相対論に対するループ量子重力の補正効果が宇宙論的摂動の進化に対して与える効果について調べた.ループ量子宇宙論に基づいた場合に存在する,いくつかの量子化の不定性について精査し,その不定性を改善するための研究を行なった.さらに,超高エネルギーの紫外線領域において,自然な振る舞いを示す量子化の方法について考察した.さらに,インフレーションを引き起こすスカラー場の運動エネルギーに支配されている時期において,ループ量子補正の効果が原始密度揺らぎのパワースペクトルに与える影響について調べた.特にインフレーションの前にバウンス期が存在する場合の原始密度揺らぎのスペクトルとスケール不変性からのずれに関して,解析的な評価を与えた.また,宇宙初期の量子状態の真空の選び方によって,どのように宇宙論的揺らぎのダイナミクスに影響を与えるかについて詳細に調べ,それが宇宙背景輻射などの観測に与える影響について議論した. 上記の研究内容は,4本の学術論文としてまとめられており,すでにPhysical Review D誌やJournal of Cosmology and Astroparticles誌に掲載されている.また,EREP2021, JGRG30などの国際会議において,上記の研究成果を口頭で発表した. また,京都大学基礎物理学研究所を訪問し,セミナーを行うだけでなくループ量子宇宙論に関する研究打ち合わせを行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに,ループ量子重力理論に基づく宇宙初期の密度揺らぎの進化について主に研究を行い,量子化の不定性が密度揺らぎの進化に与える影響を明らかにするなど,一定の成果を挙げてきた.その成果は,宇宙背景輻射の観測から量子重力理論の兆候を探る上で重要な意味を持つ.さらに,ループ量子重力理論をブラックホールの物理に応用し,重力波の観測から一般相対論からのずれを検証する研究を始めており,研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,ループ量子宇宙論における密度揺らぎの進化について,今までの解析的な評価を発展させ,数値的に揺らぎの発展方程式を解く.それにより原始密度揺らぎのパワースペクトルに対して詳細な評価を与える.さらに,摂動の非線形性の効果も入れて解析を行い,宇宙背景輻射の非ガウス性の観測などから,量子重力の補正を探る研究を行なっていく.また,量子重力理論におけるブラックホール解の精査と,摂動に対する安定性の研究を行う.さらに,ブラックホール連星系合体後の固有振動の計算を理論的に行い,重力波の観測から量子重力の兆候を探る.
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