研究実績の概要 |
自己組織化を巧みに活用することで不斉ナノ空孔を有する多種多様な新規ヘリカルラダーポリマー・メタロキラル超分子を合成し、それらの特異な構造特性を戦略的に活用した高度キラル機能の開拓を目指し、以下に示す成果を得た。 【1】光学活性なジブロモスピロ化合物と1,4-ベンゼンジボロン酸エステル誘導体の鈴木・宮浦カップリング重合と、続くアルキン芳香環化を行い、数平均分子量が1万程度の左巻き及び右巻きの中空ラセン構造を有するヘリカルラダーポリマーを得ることに成功した。欠陥なくヘリカルラダー構造が生成していることは、1H NMR、IR、吸収、円二色性、蛍光を含む種々の分光分析、質量分析により確認し、構造最適化計算により、1 nm程度の不斉ナノ空孔を有していることが分かった。ヘリカルラダーポリマーをシリカゲルに担持して調製した高速液体クロマトグラフィー用キラル固定相の光学分割能を評価したところ、点不斉、軸不斉、面不斉を含む広範な種類のキラル化合物に対して優れた不斉識別能を示すことが明らかとなった。一方、ラダー化前のランダムコイル構造の前駆体ポリマーは、光学分割能をまったく示さないことから、中空ヘリカルラダー構造の構築が、高性能な光学分割・不斉識別材料を開発するための有力な戦略になり得ることを見出した。 【2】光学的に純粋なトリプチセン骨格を含有するラダー型ビス(ベンゾ[f]イソキノリン)配位子と白金(II)錯体との配位駆動自己集合により、ホモキラルなトリプチセンからなる初めての光学活性環状金属錯体の合成に成功した。ラセミの配位子が、完璧なホモキラルセルフソーティングを起こし、一対の鏡像の環状金属錯体に定量的に変換されることも見出した。対応する非ラダー型配位子を用いた比較検討から、ラダー骨格の導入が選択的な配位駆動自己集合に重要な役割を果たすことを明らかにした。
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