研究課題/領域番号 |
20F20336
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
馬 仁志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, グループリーダー (90391218)
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研究分担者 |
XUE HAIRONG 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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キーワード | リチウム空気電池 / 光電気化学 / 半導体電極 |
研究実績の概要 |
本年度において、その場成長法を開発し、ポリトリチオフェン(pTTh)をベースとした半導体光電極の作製を重点的に進めた。紫外可視吸収スペクトルやX線光電子分光測定などにより作製したポリトリチオフェンのバンドギャップおよび光電気化学特性を解析した結果、p型半導体であることを明らかにした。光照射下でポリトリチオフェンの酸素還元性能が大幅に向上される実験データに基づき、カソードとして試作した光アシストLi-O2電池の性能評価を行なった。ポリトリチオフェン半導体光電極を用いたLi-O2電池の放電電圧が2.69Vから3.41Vまで増大し、エネルギー効率は29%向上するなど顕著な増強効果が得られた。Li-O2電池の貯蔵性能が半導体電極構造と密接に関係していることを実証した。 また、液相合成戦略に基づいて、透明導電性基板(ITO、FTO)上に遷移金属酸化物(BiVO4やFe2O3など)半導体ナノ構造の形成を試みた。基板の上にまずbeta-FeOOHナノロッドアレイを水熱合成し、続いて熱処理することによって、alpha-Fe2O3ナノロッドアレイに変換することを確認した。試作したalpha-Fe2O3ナノロッドの化学組成、形態および結晶構造等を分析・評価するとともに、バンド構造解析結果からLi/Li+標準電極との理論電位を求めることができた。作製したalpha-Fe2O3ナノロッドはポリトリチオフェンと異なるn型半導体光電効果を示すことから、酸素カソードとして新しいタイプの光アシストLi-O2電池の設計・構築に着手し始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
その場成長法によりFTO表面でポリトリチオフェン半導体光電極を作製し、その光電気化学特性を解析した結果に基づき、カソードとして光アシストLi-O2電池の構築に成功した。放電電圧が2.69Vから3.41Vまで増大し、エネルギー効率は29%向上するなど、期待された増強効果を達成した。 作製したalpha-Fe2O3ナノロッドの形態、化学組成および結晶構造の解析を行ない、目的のn型半導体電極の形成を確認し、酸素カソードとして新しい光アシストLi-O2電池の設計・構築に着手することが可能となった。 上述のように、半導体光電極を作製し、酸素カソードとして高い光電特性と動作可能性を備えた新型光アシストLi-O2電池の実現に向けて順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は主に3つの課題に焦点を当てて行なう。1つ目は、ポリトリチオフェンのようなp型半導体電極に関する体系的な研究を続けて、その光電効果を上げることにより光アシストLi-O2電池の放電電圧をさらに上げる。2つ目は、n型半導体電極の合成と評価を進める。遷移金属酸化物n型半導体電極の光電特性を利用して、光アシストLi-O2電池の充電電圧を低減する。第3に、上記のp型とn型半導体電極を組み合わせることによりサンドイッチ構造を構築する。放電プロセスにおいてp型半導体、充電プロセスではn型半導体をそれそれ稼働させるユニックな充放電方式を実現し、光アシストLi-O2電池のエネルギー効率をさらに向上することを目指す。 各種半導体電極の形態変化、結晶構造および光電効果を詳しく評価するとともに、エネルギー効率、比容量、レート特性、サイクル寿命などのエネルギー貯蔵性能との密接な関係を明らかにし、光アシストLi-O2電池の動作メカニズムの確立に向けて研究を推進していく。
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