研究課題/領域番号 |
20F20342
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤井 学 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (30598503)
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研究分担者 |
SETHUMATHAVAN VADIVEL 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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キーワード | 窒化炭素光触媒 / g-C3N5 / 促進酸化処理 / 新興汚染物質 / 水素ガス |
研究実績の概要 |
河川や湖沼、海域など世界各国の水域では、医薬品や農薬、食品添加物などの様々な人為由来の汚染物質が検出されている。本研究では、光触媒作用による汚染物質の効率的な酸化分解除去へ向け新たな排水酸化処理技術の開発を目的とする。今年度の研究では、これまでに合成されたg-C3N5ヘテロ接合構造体を用いて、種々の条件下において新興汚染物質(ファビピラビル:COVID-19患者に対する治療薬)の分解性能試験を行うことで、g-C3N5ヘテロ接合構造体による分解メカニズムを解明するとともに、実験系の最適化を行った。具体的には、gC3N5/ Bi4O5Br2複合体ならびにg-C3N5単体とBi4O5Br2単体を用いてファビピラビルの除去試験を実施した結果、光触媒としてg-C3N5とBi4O5Br2を用いた系では可視光照射(60分程度)によるファビピラビルの除去率は60%以下であった。一方で、gC3N5/ Bi4O5Br2複合体を添加した系では94%の除去率を達成した。また、ベンゾキノンやエタノールアミン、イソプロパノールなどのラジカル捕捉剤として使用し、分解反応に関与している主要なラジカルを調べた結果、g-C3N5/Bi4O5Br2光触媒を用いた分解では、ベンゾキノンやエタノールアミンに影響を受けた。従って、ファビピラビルの分解反応においてスーパーオキシドやヒドロキシラジカルが主たるラジカルであることが確認された。以上に加え、光触媒濃度の影響を明らかにするため、g-C3N5/Bi4O5Br2複合材濃度を変化させ、ファビピラビルの分解試験を行った。その結果、触媒濃度を1 g/Lまで増加させると処理効率は増大した。従って、触媒濃度がある閾値以上の値を取ると凝集による触媒表面積低下や可視光吸収活性低下、光透過性の低下等が原因でファビピラビルの分解が制限されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初よりg-C3N5をベースとした複合材(Bi4O5Br2など)の合成に加え、新たに種々の実験条件下において新興汚染物質(ファビピラビル)の分解試験を実施することを予定しており、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度では、前年度までに得られたg-C3N4複合材の物性分析・新興汚染物質の分解試験を継続するとともに、分解性能の高いものを複数対象として、実環境下での光触媒水分解性能を調べる。具体的には、前年度までに検討したg-C3N5/Bi4O5Br2に加え、高い触媒特性が期待されるg-C3N5/FeOCl複合体も対象とすることで、新興汚染物質の分解試験を実施する。実環境下を見据え、試験溶液pHや競合イオンなどの存在下で実験を実施する。さらに、エネルギー生成や環境負荷の観点を包含するライフサイクルアセスメントをあわせて実施することで、開発されたg-C3N4複合材が持続可能な水・排水処理プロセスに有用であるか検証を行う。
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