研究課題/領域番号 |
20F20393
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中園 幹生 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70282697)
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研究分担者 |
JIMENEZ SERNA JUAN 名古屋大学, 生命農学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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キーワード | イネ / ワックス / 酸素漏出バリア |
研究実績の概要 |
植物の重要な耐湿性形質である酸素漏出(radial oxygen loss: ROL)バリアの構成成分やその形成誘導物質は長年不明なままである。これまでROLバリアの構成成分としてスベリンが有力視されてきたが、最近、イネのワックス生合成遺伝子DRP7がROLバリア形成条件で根の外層で発現することや、drp7変異体の根ではROLバリアが形成されないことが明らかになり、ワックスがROLバリアに関与することが示唆された。本研究では、イネdrp7変異体を用いてワックス成分がROLバリアの構成成分として機能するかどうかを明らかにすることを目的とする。 令和3年度は、ワックス成分がROLバリアの構成成分として機能するかどうかを明らかにするために、野生型「金南風」とdrp7変異体の根のエンザイム処理したあと、外層組織を単離して、ガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリィーを用いて、それらの試料のワックス成分およびスベリン成分を分析し、比較解析を行った。その結果、根のワックス成分が野生型とdrp7変異体で異なっていることが明らかになった。 drp7変異体にDRP7遺伝子を導入した個体では、ROLバリア形成が野生型と同様であったことから、根のワックス成分も野生型と同様に回復するかどうかを調べるために、根のエンザイム処理をし、外層組織を単離した。今後、この試料のワックス成分、スベリン成分を分析する予定である。 さらに、DRP7プロモーターにレポーター遺伝子をつないだプラスミドを構築し、形質転換体を作出した。その遺伝子発現の組織特異性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、研究計画通りに、drp7変異体と野生型「金南風」の根の外層におけるワックス成分とスベリン成分の分析を行った。また、DRP7遺伝子のプロモーターにレポーター遺伝子をつないだ形質転換用プラスミドを作製して、形質転換体を作出し、遺伝子発現の部位を調査しており、概ね研究計画通りに進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、drp7変異体にDRP7遺伝子を導入した個体の根の外層組織を材料にして、ガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリィーを用いて、ワックス成分、スベリン成分を分析する。さらに、DRP7の機能を明らかにするために、野生型「金南風」とdrp7変異体の根の外層をレーザーマイクロダイセクションで単離して、RNAを抽出後、RNA-Seq解析を実施する。野生型とdrp7変異体の間で有意に発現量の異なる遺伝子を分類して、蓄積量に差のあったワックス成分の生合成に関わると考えられる遺伝子を同定する。DRP7がその遺伝子の発現制御に関わるかどうかを検証する。これらの結果を論文にまとめて、投稿する。
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