軟骨細胞は、四肢骨や脊椎骨の原形を形成する。軟骨細胞は、増殖する静止軟骨細胞層と増殖軟骨細胞層、細胞質が肥大化した肥大軟骨細胞層、そしてさらに分化した終末期肥大軟骨細胞層からなる成長板を形成する。これにより、骨の成長が起こるとともに、終末期肥大軟骨細胞層に血管が侵入、終末期肥大軟骨細胞はアポトーシスによって死滅、侵入した骨芽細胞前駆細胞が骨芽細胞に分化し、骨基質を形成、軟骨が骨に置換されていく。最近、少なくとも一部の終末期肥大軟骨細胞が骨芽細胞あるいは骨髄間質細胞に分化転換することが明らとなった。我々は、この分化転換に、骨芽細胞分化に必須な転写因子Runx2が必要であるか検討した。Col10a1 Creマウスを用い、肥大軟骨細胞特異的にRunx2を欠失させたマウスを作製した。このマウスでは、肥大軟骨細胞に由来する細胞で、Runx2を欠損している。さらに青色の蛍光タンパク質を発現するレポーターマウスと交配し、肥大軟骨細胞由来の細胞は青色の蛍光タンパク質を発現するようにした。さらに、骨芽細胞に特異的に赤色タンパク質を発現するレポーターマウスとも交配した。これによって、肥大軟骨細胞由来の細胞は青色、骨芽細胞は赤色、肥大軟骨細胞から分化転換した骨芽細胞は白色(青と赤が合わさると白色)を呈するマウスを作製した。Runx2を欠損させていないマウスでは、胎生16.5日の成長板直下で、白色の骨芽細胞集団が認められたが、Runx2欠損マウスでは認められなかった。すなわち、このマウスでは、終末期肥大軟骨細胞から骨芽細胞への分化転換が起こらなかった。しかし、出生時には、軟骨周囲から侵入した骨芽細胞前駆細胞が骨芽細胞に分化し、分化転換の欠損を補い、6週齢では正常の骨量を示した。従って、Runx2が分化転換に必須であり、分化転換は出生後早い時期までの骨形成に重要であることが明らかとなった。
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