ヒトゲノムには、個人差(多型)が存在し、疾患へのかかりやすさ(疾患感受性)や表現型の個人差に影響することが知られている。疾患に関係する多型を検出し、疾患発症機序の解明、疾患発症予測などにつなげるため、数多くの多型解析プロジェクトが行われている。しかしながら、ありふれた疾患(common disease)において、現在の多型解析は遺伝率(疾患発症リスクのうち遺伝的多様性が説明する割合)のうち一部しか説明ができない(「missing heritability(見逃されている遺伝率)」問題)。この問題には、次の3つの可能性が考えられる。 (可能性1)ヒトゲノムには効果の弱い多型が非常に多く存在しており、非常に多くのサンプル(数十万人)を用いた解析を行うことで遺伝率を説明する多型を同定することができる。(可能性2)一塩基の違い以外に機能的な構造異常が存在し、疾患のリスクに関係している。(可能性3)頻度が低いアミノ酸多型が存在し疾患に関連している。 おそらく、これらの中の一つだけが正しいわけではなく、この3つが、ヒトの疾患と遺伝の関係を形成していると考えられる。(可能性1)については、国際コンソーシアムでの大規模研究が進行中である。しかし、(可能性2)、(可能性3)に関しては、研究手法が未だ確立されていない。そこで、これらの確立と疾患解析への応用を目指した研究を行う。 2020年度は、長鎖シークエンサーからの構造異常検出を行なった。外国人特別研究員は辞退するが、引き続き所属教室の助教として本研究に従事する予定である。
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