研究課題/領域番号 |
20F20727
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
矢島 啓 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (10283970)
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研究分担者 |
DEROT JONATHAN 島根大学, エスチュアリー研究センター, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2020-07-29 – 2022-03-31
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キーワード | 機械学習 / ランダムフォレストモデル / K-meansモデル / アオコ / HAB / 水質予測 / 水質管理 |
研究実績の概要 |
湖沼やダム貯水池における植物プランクの異常発生に伴うアオコ問題は,フランス及び日本はもとより世界の共通課題である。本年度は,機械学習を用いたアオコ予測手法について検討を行った。 まず,英仏海峡におけるアオコを対象とした研究では,機械学習モデルを用いて,水質計測のサンプリング間隔の違いによる植物プランクトンの発生予測への影響を検討した。この研究では,英仏海峡に設置されたサンプリング間隔20分の自動計測システムで得られた12個の物理化学パラメータの6年間のデータを用いた。予測は,ランダムフォレスト(RF)モデルとスライディングウィンドウ手法に基づいて行った。 その結果,サンプリング頻度がRFモデルの予測精度に影響を与えることを明らかにした。また,RFモデルは高周波データに含まれる追加情報を利用していることが示唆された。 さらに,フランスとスイスの国境に位置するジェネバ湖における34年間の長期的な水質データを対象に研究を行った。まず,K-meansモデルを用いてアオコレベルのグループ分けを行った。次に,スライディングウィンドウ手法を用いて,RFモデルの入力に異なるラグタイムを導入した解析を行った。その結果,アオコ発生イベントの予測を,ある程度の精度でできることを示した。さらにRFモデルは,水温が14℃前後のときにアオコの優占種であるP.rubescensの存在量が最も増殖することを示した。この結果は,既往研究における本植物プランクトンの生物学的プロセスと一致していた。 以上2つのフィールドを対象に行った研究成果は,機械学習を用いたアオコの事前予測と結合した湖沼管理のための意思決定支援ツールを生み出す可能性があり,湖沼管理者にとって大きな利点となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究で,英仏海峡とジェネバ湖という2つの異なる水体を対象に,機械学習の一つであるランダムフォレストモデルを用いて,アオコの予測が可能であることを示すことができた。これらの成果は次の研究ステップである,機械学習と水理水質予測モデルの結合への研究に進む密筋を示すものとなった。さらに,今年度の研究成果は,2報の国際誌に掲載されており,その成果が国際的にも認められていることを客観的に示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,機械学習モデルの1つであるのランダムフォレストモデルに加えて,深層学習モデルの1つであるLong Short-Term Memory (LSTM)モデルを用いたアオコの予測計算を行う予定である。その上で,RFモデルとLSTMモデルの比較検討により,両者のモデルの特性を把握する。そして,LSTMモデルのパラメータ選定においてRFモデルを適用することにより,LSTMモデルによるアオコの予測精度の向上を図る。 引き続いて,水理モデルと水質モデルをカップリングした湖沼生態系シミュレーションモデルを用いて,アオコの優占種となる植物プランクトンを含む水質予測モデルの構築を国内のダムを対象に行う。その上で, 生態系シミュレーションモデルのパラメータ設定に機械学習モデルを取り込んだハイブリッドな生態系モデルを構築し,従来の生態系モデルによるアオコ予測精度の向上を目指す。
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