研究課題/領域番号 |
20F20730
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高柳 広 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (20334229)
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研究分担者 |
ZANG SHIZHAO 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2020-07-29 – 2022-03-31
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キーワード | がん骨転移 / RANKL / がん免疫 |
研究実績の概要 |
遠隔臓器への転移はがん患者の最大の死因であり、がん転移の制圧は世界レベルで重要な課題である。特に骨は代表的な転移標的臓器であり、骨転移後の期待余命は低く予後不良を齎す。最近、破骨細胞分化必須サイトカインRANKLに対する中和抗体と免疫チェックポイント阻害剤の併用療法が骨転移例で効果的であることが明らかとなり、RANKLの意外ながん免疫学的機能が指摘されつつある。そこで本課題では、骨転移巣におけるRANKLによる抗腫瘍免疫応答の制御機構を解明することで、骨転移に対する新規複合的がん免疫療法の開発に取り組んでいる。本年度ではまず、マウスの乳がん細胞株EO771、メラノーマ細胞株B16F10の左心室移植によるがん骨転移モデルマウスを用いて、血中可溶型RANKL(sRANKL)の産生動態、ならびにRANKL発現細胞とRANK発現細胞の挙動をフローサイトメトリーならびに組織学的解析により検討した。加えて、ヒト骨転移巣のシングルセルRNA-seqデータを独自に再解析することで、骨転移巣の腫瘍微小環境内の免疫細胞亜集団を調べ、RANKやRANKL発現を指標に、骨転移巣病態に関与するRANKL発現細胞とRANK発現細胞の候補を検討した。RANKL産生源としてはリンパ球および骨芽細胞、骨細胞、そしてRANK産生細胞として樹状細胞やマクロファージが候補として考えられることから、それらの細胞種特異的にRANKLもしくはRANKを欠損するコンディショナルノックアウトマウスの作製を進め、骨転移巣の進展、ならびに骨転移巣に対する抗腫瘍免疫応答および免疫抑制性細胞の変動を調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RANKL発現細胞とRANK発現細胞をフローサイトメトリーで特定する他、ヒト骨転移巣のシングルセル解析データ(public database)を再解析することで、より網羅的に複数の免疫細胞集団の遺伝子発現動態を調べることができ、それらの情報も加えることで、骨転移巣病態に関与するRANKL発現細胞とRANK発現細胞の候補を効率良く抽出することができた。RANKL発現細胞とRANK発現細胞の候補が多数考えられることから、多種類のコンディショナルノックアウトマウスを作製することが必要となっているが、現在順調に交配が進み、解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、候補細胞特異的なRANKL欠損マウス、およびRANK欠損マウスを用いてICIの効果を検討し、骨転移巣に対する抗腫瘍免疫応答に関わるRANKL産生細胞とRANK発現細胞を特定する。最終的には、抗腫瘍免疫応答に関わるRANKL産生細胞とRANK発現細胞を対象に網羅的遺伝子発現解析を実施し、特異的マーカー分子に対する中和抗体や低分子阻害化合物をもちいることで、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体などの免疫チェックポイント阻害剤との併用投与による骨転移抑制効果をin vivoレベルで検証する。がんの進展・転移に伴うRANK発現細胞およびRANKL発現細胞の空間的動態を評価するために、それぞれのレポーターマウスの作製も計画している。
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