研究課題/領域番号 |
20F20779
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
PEZZOTTI G. 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 教授 (70262962)
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研究分担者 |
BOSCHETTO FRANCESCO 京都工芸繊維大学, その他部局等, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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キーワード | 複合材料 / PMMA / クルクミン / 抗菌作用 / 組織再生 / インプラント |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、整形外科分野及び歯科分野での利用を念頭に置き、優れた機械的強度、生体適合性、病原体に対する耐性獲得を可能とする長期的な抗菌性を兼ね備えた新複合材料の開発である。複合材料は一般的なアクリルレジンとその他の有機化合物から作製する。この、レジンと混合する有機物として、ターメリックの主成分であり、広く薬理作用を持つクルクミンを選び、人体に無害な適切な用量を使用する。適当な濃度のクルクミン粉末の添加は、界面での相互作用を改善するようレジン表面を改質する。レジン作製後、試料における各成分の分布や化学的性質、機械的性質を様々な手法を用いて多角的な視点で評価する。次に、歯科疾患の中でも、特に虫歯や歯周病の原因菌であるP. gingivalisや整形外科インプラント使用時に感染症の原因菌となるS. epidermidisを用いて抗菌作用を調べる。これと並行し、マウス間葉系幹細胞株 (KUSA-A1)を用いて細胞の接着性や骨形成についても分析を行う。さらに生物学実験の最終段階として、マウスを用いたin vivo実験を行う。in vitro, in vivo実験の両方については、京都府立医科大学と共同で行い、その前後の特性評価実験は京都工芸繊維大学で行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ポリマー材料 (ポリメチルメタクリレート, PMMA) と有機物の中でも、どんな材料をどのような割合で配合するかということから開始した。その有機物の候補として、多くの先行研究から優れた抗菌特性を持つことが知られ、医療の分野でその利点を生かすことのできるクルクミンを挙げた。研究の最初の段階は、材料を添加し、割合を変えた結果、ポリマー自身の機械的特性にどのように影響を及ぼすのかを調査することであった。異なる2つの配合割合でPMMAと混合し、機械的試験を行った。添加するクルクミンの割合を増やすと、PMMAの機械的強度は低下したため、より低い混合割合で研究を進めることとした。続いて、作製したPMMA-クルクミン複合材料の表面粗さや、クルクミンがどのように分布しているのかを調べるために、様々な顕微鏡観察や分光法を用いて解析を行った。第3段階は、この複合材料が細菌や細胞にどのような影響を与えるのかについてin vitro実験で調査を行った。使用した細菌は、2種類。1つはグラム陽性菌 (S. epidermidis)、もう1つはグラム陰性菌 (P. gingivalis)である。PMMA-クルクミン複合材料は、抗菌性の観点で、単独のPMMAよりも優れた挙動を示した。また、骨組織の再生に与える影響を調べるために、マウス間葉系幹細胞株 (KUSA-A1)を用いて、骨芽実験を行った。結果は、クルクミンの添加により、骨の有機成分と無機成分の両方の形成を伴う組織再生に有利に働くことを示した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画は、人工関節のみならず人工器官などを含めた広い医療分野で、クルクミン複合材料の使用に関する特許の適用を目指している。その後、すべての結果をまとめ、国際的科学雑誌に提出する論文を作成する。研究に関しては、このクルクミン複合材料を、マウスをモデルとし、in vivoでの動物実験を行う。そこで得た実験データも公開し、特許の更新に利用する。もう1つの計画は、ポリマー自体の機能を維持した上で、さらなる改善を期待できたり、利用可能範囲を大きく広げたりするような新しい成分、材料を検証する。研究を迅速に継続・発展するにあたって、研究チームのメンバーと協力し、複合材料を商業目的で使用することに関心を持つ企業や、研究機関を見つける必要がある。
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