研究課題/領域番号 |
20F20786
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
廣瀬 丈洋 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), グループリーダー (40470124)
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研究分担者 |
BEDFORD JOHN 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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キーワード | 断層 / 水 / 摩擦発熱 / 間隙率 |
研究実績の概要 |
地震発生機構として最も着目されている現象にThermal Pressurization(TP)がある。TPは、「地震時の断層摩擦発熱による間隙水圧上昇が大地震を誘発する」という物理化学現象である。しかし、大地震発生場である沈み込み帯のどのような場所でこのTPが起こりうるのか、その深度条件はよくわかっていない。そこで本研究では、南海付加体中の間隙率の異なる岩石試料を用いて地震性の高速すべり実験(TP再現実験)をおこない、地震時に断層内部で進行する「変形-反応-流体移動の動的連成過程」を詳細に調べる。特に、間隙率を沈み込み帯の深さと等価であると考え、沈み込みプレート境界の浅部~深部のどのような深度でTPが有効に起こりうるのかを明らかにしたい。 初年度(2020年12月から2021年3月末)は、野外調査によって現在地表に露出している南海付加体岩石試料から、間隙率(2~50%)の異なる岩石試料を準備する予定であった。しかし、コロナ感染拡大の影響で移動を伴う野外調査をおこなうことが困難となり、実験試料を入手することができなかった。そこで、研究室で保管している標準的な花崗岩と斑レイ岩試料を用いて、地震性高速摩擦実験のための試料作製および試験機の調整をおこなった。次年度も、コロナ感染拡大のために実験に用いる岩石試料を採取できない場合が想定される。そこで、当初予定していた地震時の断層摩擦発熱による「間隙水の圧力の変化」ではなく、標準岩石試料を用いた断層摩擦発熱による「間隙水の物性の変化」に着目した研究に研究主題をシフトすることも検討しはじめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の4カ月間で、地震性高速摩擦実験に用いる間隙率(2~50%)の異なる岩石試料を西南日本の南海付加体から採取する予定であった。しかし、コロナ感染拡大の影響で野外調査をおこなうことが困難になり、実験試料を入手することができなかった。そこで、研究室で保管している標準的な花崗岩と斑レイ岩試料を用いて、実験用試料作製と試験機の調整をおこなった。予察的な実験では秒速数マイクロメートルの低速から地震時の秒速1メートルの高速すべりを再現する実験をおこない、模擬断層の力学挙動と発熱温度を計測できることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に計画していた間隙率の異なる岩石試料を採取できた場合は、岩石試料を速やかに整形して高速摩擦実験をおこなう。実験には所属機関に設置されている流体圧制御型高速摩擦試験機を用い、地震時の秒速数メートルの速度条件で試料をすべらせて、地震断層運動時の断層強度、発熱温度そして流体移動特性を決定する。また、実験前後に粉末X線回折(XRD)分析をおこない、岩石試料中の構成鉱物の変化を明らかにする。次年度もコロナ感染拡大の影響で、地表露頭から実験用岩石試料を採取できない可能性がある。その場合は、当初予定していた地震時の断層摩擦発熱による「間隙水の圧力の変化」ではなく、実験室に保管している岩石試料を用いて断層摩擦発熱による「間隙水の物性の変化」に着目した研究に研究主題をシフトしていきたい。
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