研究課題/領域番号 |
20F40053
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
才ノ木 敦士 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70802049)
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研究分担者 |
ALIABADIAN ZEINAB 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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キーワード | 岩石異方性 / 引張強度 / 動的試験 / X線CT |
研究実績の概要 |
岩石の多くは異方性を有しており、強度、剛性といった力学特性に大きな影響を及ぼすことが知られている。これまで異方性を有する岩石の力学特性に関して多くの研究が実施されてきたが、巨視的な力学的物性値(圧縮・引張強度など)や破壊特性に関する研究が大部分であり、異方性を有する岩石の微視的な破壊メカニズムに関して十分な知見が得られていなかった。 本研究ではSplit-Hopkinson Pressure Bar (SHPB)を用いた動的ブラジリアン試験を実施するために、群馬県で採石された緑色片岩ブロックから直径34 mm、厚さ17mmの円柱形の供試体を9つ作製した。そして、円柱供試体の側面に幅7.42mmの面を高さ方向に一対作製した。この面は、SHPB試験においてIncident barと供試体の接触面積を増加させ、動的試験において重要である力学的なつり合い状態を作り出す役割がある。供試体作成後、熊本大学のマイクロフォーカスX線CTを用いて各供試体のCT撮影を行い、動的試験前の状態における内部構造を把握した。その後、供試体を韓国に輸送し、全州国立大学でSHPB試験を実施した。各試験において、供試体が動的に破壊する様子を高速カメラを用いて撮影した。最後に、片岩供試体を砕き、粒状にした試料の構成元素をXRDを用いて分析した。 上記のXRDによる分析から今回用いた片岩供試体が主にCalcite、Quartz、Chlorite-serpentine、Albiteから構成されることが判明した。この情報とCT画像から得られた密度分布に基づき、9つの供試体に関して鉱物粒子の空間分布を考慮した数値モデルを作製している段階である。今後、作製した数値モデルを用いて動的試験の再現解析を実施する予定である。そして動的試験中に撮影された写真から得られた破壊の進展過程と数値シミュレーション結果の比較を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
動的供試体に使用する円柱供試体に特殊加工(一対の平面を作製する)を実施するために専門の会社に依頼したが、作製に数か月を要した。またX線CT撮影を実施する際に、共用でCT装置を使用しているため、他の研究グループの撮影の関係で一週間に1供試体程度の撮影しか実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
CT画像の密度分布とXRDから同定された鉱物組成を対応させ、数値モデルを作製していく予定である。ただし、その仮定でCT画像のカッピング効果(円柱供試体の円周付近が中心部より白っぽくなる現象)により密度分布に対応した鉱物を同定するのが難しい状況である。今後、カッピングを考慮できるように、中心部付近のCT値と円周付近のCT値を対応させるような関係式を構築し、それに基づきCT値から鉱物を推定し、数値モデルに対応する物性値を与えていく予定である。数値モデル完成後は、個別要素法を用いてSHP試験を再現した動的シミュレーションを実施し、破壊挙動を調査する。
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