(1)宿主にオス殺しを起こすボルバキアによる性決定関連遺伝子への影響-培養細胞を用いた発現解析・・・昆虫細胞にオス殺しボルバキアを導入し、性決定遺伝子群の発現への影響をリアルタイム定量PCRによって調査することにより、ボルバキアが複数の性決定関連遺伝子の性特異的スプライシングパターンに大きな影響を与えることがわかった。つまり、ボルバキアは宿主の性決定を細胞レベルでコントロールしており、それがオス殺しの原因であるといえる(昨年度の成果と合わせて、現在、原著論文投稿中)。 (2)キタキチョウのボルバキアが宿主の成長期における性決定遺伝子のスプライシングパターンに与える特異な現象を明らかにした。W染色体を失なったことによるメス決定能力の不備をボルバキアが生育後半期に補償していると考えられた(現在、原著論文執筆中)。 (3)オス殺しボルバキアによるダンゴムシの性決定への影響調査・・・つくば市由来のオカダンゴムシに昆虫のボルバキアを感染させる実験を行った。インジェクション後、数週間ごとにサンプリングしボルバキアの有無をPCRを用いて行ったが、ボルバキアの増殖は見られなかった。 (4)メス化ボルバキアによる昆虫の性決定への影響調査・・・現在、フランスからボルバキアに感染したオカダンゴムシを輸入するために、研究機関内での煩雑な手続きに対応し続けたが、結局特別研究員の在留期間内に輸入することができなかった。
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