研究課題/領域番号 |
20H00005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西野 嘉章 東京大学, 総合研究博物館, 特任教授 (20172679)
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研究分担者 |
森 洋久 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (10282625)
Osawa Kei 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (80571231)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 美術アーカイブ / 出版アーカイブ / 戦後日本美術 / 写真 |
研究実績の概要 |
本研究の基礎資料である、美術出版社旧蔵写真のネガフィルム・コレクションを調査し、その全貌を把握することができた。コレクション内容の調査結果は、本研究発足時に予想していた内容を大きく上回るものであった。当初、美術出版社による出版物のために撮影された、美術家のポートレート写真の35ミリフィルムを主に想定していたが、調査の結果、35ミリフィルム(99,819カット)のほか、展示風景などを捉えた120フィルム(「ブローニー」)を約1万カット、そして美術作品などを撮影した、いわゆる複製写真の4×5フィルムを約1万5千カット確認した。その内、35ミリフィルムは全てクリーニング、修復、及びデジタル化した。99,063カットを通常のプロセスでデジタル化できたが、756カットは劣化が進んでおり、平滑化したうえで個別に撮影した。点数は限られたものの、劣化のためデジタル化できないカットもあった。 デジタル化された35ミリフィルムのデータをもとに、データベース化に向けた記載を始めた。今年度は72,068点を調査し、個々のカットにID番号を付与し、被写体の氏名、撮影日及びフィルムの形態を和英バイリンガルで記入した。並行して、データベースの基本構造を設計し、構築に向けたデザインの初案を作成した。 デジタル化された画像データをもとに、歴史的に重要と思われる写真を被写体別に選定し、すでに出版物等に掲載されている写真との比較研究を始めた。研究分担者は、戦後日本における雑誌文化とエフェメラをテーマにした論文を学術雑誌に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、ネガフィルム・コレクションの内容が研究補足時の予想を上回ったため、フィルムのデジタル化の計画を見直した。今年度は35ミリフィルムを99,819カット修復およびデジタル化し、120フィルムおよび4×5フィルムの修復およびデジタル化は来年度に見送った。また、フィルムの劣化が進んでおり、修復および平滑化の作業に時間がかかったため、全点を配架するところまでは至らなかった。一方、残りのフィルムのデジタル化と全点の配架は来年度中に完了する見込みであり、研究に支障をきたすようなスケジュール変更ではない。 データベース化に向けた基礎資料の記載は順調に進展している。デジタル化したフィルムの記載は既に7割以上完成しており、画像データ・ファイルとの照合もできているので、データベース構築の基盤は整った。 新たにデジタル化された写真と既に発表されてきた写真との比較研究は、数人の美術家を対象に始めた。データの件数が10万点に及ぶため、全体的な比較研究は短期間で不可能だが、象徴的な写真を対象にその方法論を組み立てるようにした。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に続いて、デジタル化とデータベース化の作業を集中的に進める。上記の通り、2021年度中に120フィルム(約1万カット)そして4×5フィルム(約1万5千カット)を修復およびデジタル化する。フィルムの劣化が進んでいることから、そして120フィルムや4×5フィルムという特殊フォーマットが加わったことから、デジタル化の費用は当初の予算を大きく上回る。一方、2021年度中に計画していた国内外の調査は、現在の渡航状況からほぼ不可能であると見込み、当初旅費に充てていた予算を残りのフィルムのデジタル化に充てることにする。 並行して、デジタル化されたデータの記載を進める。35ミリフィルムの記載を2021年度中に完成させ、120フィルムも全点記載する予定である。初年度に作成したデータベースの基本設計をもとに、それらのデータを使用して、データベースの試運転を行う。 写真の比較研究はこれまで通り継続する。一方、美術アーカイブの国際ネットワークの構築に向けた現地調査や会議は予定通り実施できないため、その方法を変更する。2022年度での実施を目標に、2021年度中に各機関と連携し、準備を進める。
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