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2020 年度 実績報告書

江戸幕府紅葉山文庫の再構と発信―宮内庁書陵部収蔵漢籍のデジタル化に基づく古典学―

研究課題

研究課題/領域番号 20H00013
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

住吉 朋彦  慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 教授 (80327668)

研究分担者 佐々木 孝浩  慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 教授 (20225874)
堀川 貴司  慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 教授 (20229230)
河野 貴美子  早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20386569)
一戸 渉  慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 准教授 (20597736)
矢島 明希子  慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 助教 (20803373)
上原 究一  東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (30757802)
木村 麻衣子  日本女子大学, 文学部, 准教授 (30814024)
陳 捷  東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (40318580)
高橋 悠介  慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 准教授 (40551502)
會谷 佳光  公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (50445714)
佐藤 道生  慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (60215853)
山田 尚子  成城大学, 文芸学部, 准教授 (60537091)
大木 康  東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70185213)
荒木 裕行  東京大学, 史料編纂所, 准教授 (70431799)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード書誌学 / 紅葉山文庫 / 図書寮文庫 / 内閣文庫 / 蔵書研究 / 文献学 / 慶長御譲本 / 道蔵経
研究実績の概要

本年度当初に分担者の会合を行い、研究の具体的目標、及び共同研究組織の編成方針を策定した他、総計6回のウェブミーティングを開き、研究を進めるとともに、個々の研究事業に参画する若手研究者等、総計33名による「紅葉山文庫研究会」を組織運営した。
書誌調査については、人員の移動制限下における調査環境の構築に資源を用い、前身の共同研究「宮内庁書陵部収蔵漢籍の伝来に関する再検討」において取得済みの写真画像全件等を、幹事機関である慶應義塾大学附属研究所斯道文庫及び東京大学東洋文化研究所に配置し、データの保全と活用に堪える形とした他、クラウドサービスを利用して、研究メンバーが調査する書籍の未公開画像を詳細に確認し、原本調査時間を最小限に抑える態勢をとった。実際の調査と書誌データの研討も、若干数実施した。
書籍画像デジタル化の方面では、撮影により31部446冊(漢籍経部善本等)、マイクロフィルムのスキャンにより1部4139帖(明版道蔵経)のデジタル化を完了した。
編集事業では、既刊目録からの関連データ抽出について、『改訂内閣文庫国書分類目録』分の作成を完了、図書寮文庫分についても作業を開始した。また元治重訂『御書籍目録』の写真画像を取得、翻字デジタル化に着手した。一方『御書物方日記』原本から蔵書及び蔵書閲覧管理関係記事を抽出する事業を試行し、16年分770件を得た。
成果公開のためのデジタルアーカイブの構築について、まず継承するアーカイブ「宮内庁書陵部収蔵漢籍集覧」中の「全文影像データベース」を、新規に構築するアーカイブの計画に合せてIIIF規格に準拠し、マニフェストを作成、画像のダウンロードが可能となる改修を行って、旧データベースと入れ換え公開した。その他、旧「書誌書影データベース」に認められた不正を改め、メタデータをもつ新アーカイブ用の書誌データを試作した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2020年度は夏冬における新型コロナウイルス蔓延を避けて活動を行ったため、まず電子データとウェブを利用した調査研究態勢の確立に力を注いだけれども、電子化用の機材調達等はもともと初年度の活動として予定されていた上、調査時間の圧縮、研究参加の地域拡大を目的とした追加の環境設定も、今後の活動予定に照らし、病疫の情況が安定した後にも有効に働くであろうと考えられる。
一方、原本書誌調査の事業が秋季の限られた期間にしか行えなかった点は、明かに研究遅滞の要因となった。
書誌調査が行えなかった分の研究資源は、編集及び研究情報電子化の事業に振り向けた。まず写真画像デジタル化については、書誌調査の進捗に伴って撮影書目を選定する計画であったところ、事業開始時点における既存の研究情報基づき、データベースへの初期段階での収録が望ましい善本を書誌学的視点から選び、先行撮影を行う手順に変更した。
編集事業の方面では、過去の目録を整理して現存本の調査結果と対照させる作業と、紅葉山文庫の蔵書個別の過去の利用動態を、同じく現存本に結び付ける作業の基礎行程が着実に開始された。
また電子化の事業については、5年間で新たなデータベースを公開する日程から逆算し、旧データベースを、新たにデータベース間の相互利用に適したIIIF版に変更できた点は、事前の計画の通りで、同時に新アーカイブの設計に着手し、外部データベースとの相互参照に適した新たな記述の試行に進めた点は、期待以上の成果であった。
これらの諸点を勘案すると、おおむね順調に進捗したと評価できる。

今後の研究の推進方策

2020年度の進捗を受け、2021年度には調査研究の発展を加速する。
書誌調査と研究について、まず年度の前半は、なお現地調査が制限されると見て、前回研究から継承した書誌データの整理研討を、効率を上げて進める。その際、すでに初期の書誌データが揃っている、徳川家康「慶長御譲本」の著録を確定し、データ作成を完了する。この間、社会情況の改善に合せ、宮内庁書陵部及び国立公文書館における紅葉山文庫本の書誌調査を進める。年度の後半には、原本書誌調査に力点を移しつつ、さらに紅葉山文庫漢籍経部善本の書誌調査並に著録完成を目指す。
史料編集の方面では、前年度に引続き、元治重訂『御書籍目録』の電子化と『御書物方日記』記事採録を進め、現存本との照合を開始する。
また既存アーカイブの補修として、全1454種6264帖に及ぶ宋版『大蔵経』の詳細な書誌データ載録と、20年度に取得した明版『道蔵経』4139帖の収録の作業を始め、新規アーカイブの構築については、検索や結果表示をコントロールするために内部に設ける典拠データベースの試作を行って、それをも踏まえ、新たなメタデータを伴う書誌への変換に着手する。
なお研究組織の強化改編は2021年度で一段落させ、年度の後半には実地の共同調査や研修、研究集会を催して、世代を通じ、また在外研究者との連絡をも密にして、研究交流の場を確かなものとする。

  • 研究成果

    (31件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (14件) (うちオープンアクセス 7件、 査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件) 図書 (5件)

  • [国際共同研究] 大韓民国文化財庁(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      大韓民国文化財庁
  • [国際共同研究] プリンストン大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      プリンストン大学
  • [国際共同研究] 上海大学(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      上海大学
  • [雑誌論文] 稲荷社祀官大西親盛の和歌 続々ー京都学・歴彩館蔵『〔歌日記〕』翻印と解題 (2)2021

    • 著者名/発表者名
      一戸渉
    • 雑誌名

      斯道文庫論集

      巻: 55 ページ: 119-153

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 慶應義塾大学附属研究所斯道文庫蔵 旧刊『論語義疏』伝本解題2021

    • 著者名/発表者名
      住吉朋彦
    • 雑誌名

      斯道文庫論集

      巻: 55 ページ: 67-118

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 佚存書の発生―日中文献学の交流―2021

    • 著者名/発表者名
      住吉朋彦
    • 雑誌名

      漢字を使った文化はどう広がっていたのか 東アジアの漢字漢文文化圏 東アジア文化講座2

      巻: - ページ: 387-397

  • [雑誌論文] An Examination of the Compilation and Publication of Collectanea during the Ch'ien-lung and Chia-Ch'ing Reigns2021

    • 著者名/発表者名
      陳捷
    • 雑誌名

      What Is Han Scholarship?: With a Focus on the Han-Tang and Mid-to Late Ch'ing Periods, ACTA ASIATICA: Bulletin of the Institute of Eastern Culture

      巻: 120 ページ: 51-72

  • [雑誌論文] 慶應義塾所在近世文人書簡筆跡類総覧(四)三田メディアセンター貴重書室(その三)2021

    • 著者名/発表者名
      堀川貴司
    • 雑誌名

      斯道文庫論集

      巻: 55 ページ: 243-396

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 日本における『毛詩草木鳥獣虫魚疏』の受容―国書中の引用に関する調査2021

    • 著者名/発表者名
      矢島明希子
    • 雑誌名

      斯道文庫論集

      巻: 55 ページ: 209-241

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 白話2021

    • 著者名/発表者名
      大木康
    • 雑誌名

      漢字を使った文化はどう広がっていたのか 東アジアの漢字漢文文化圏 東アジア文化講座2

      巻: - ページ: 245-254

  • [雑誌論文] 「大島本源氏物語」の再検討―新発見の定家監督書写本「若紫」帖との比較を中心に―2021

    • 著者名/発表者名
      佐々木孝浩
    • 雑誌名

      斯道文庫論集

      巻: 55 ページ: 33-65

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 享保期の江戸城西丸への謡本献上と謡曲改訂(二)2021

    • 著者名/発表者名
      高橋悠介
    • 雑誌名

      斯道文庫論集

      巻: 55 ページ: 155-208

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 観世文庫の文献資料の形成と蔵書管理の一端2021

    • 著者名/発表者名
      高橋悠介
    • 雑誌名

      能と狂言

      巻: 17 ページ: 3-13

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「炎上」する江戸の言説空間―宣長・秋成と藤貞幹の「偽書」2020

    • 著者名/発表者名
      一戸渉
    • 雑誌名

      ユリイカ

      巻: 767 ページ: 91-98

  • [雑誌論文] 空海の「文」をめぐる一考察―『遍照発揮性霊集』にみる実践と思考―2020

    • 著者名/発表者名
      河野貴美子
    • 雑誌名

      国文学研究

      巻: 192 ページ: 16-29

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 乾隆・嘉慶期における叢書の編纂と出版についての考察2020

    • 著者名/発表者名
      陳捷
    • 雑誌名

      漢学とは何か―漢唐および清中後期の学術世界 アジア遊学

      巻: 249 ページ: 148-172

  • [雑誌論文] 『源氏物語』本文研究の蹉跌―「若紫」帖発見報道をめぐって―2020

    • 著者名/発表者名
      佐々木孝浩
    • 雑誌名

      日本文学

      巻: 69‐7 ページ: 2-11

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 『日本霊異記』の「文」とその文学史的意義2021

    • 著者名/発表者名
      河野貴美子
    • 学会等名
      International Symposium Images from the Past: Intertextuality in Japanese Premodern Literature (Universita Ca'Foscari Venezia),
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 徳川家康の慶長御譲本について2021

    • 著者名/発表者名
      住吉朋彦
    • 学会等名
      日中韓漢籍研究成果報告会(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)
    • 国際学会
  • [学会発表] 漢籍利用者へのインタビュー調査に基づく利用者タスクおよびエレメントの抽出2020

    • 著者名/発表者名
      木村麻衣子
    • 学会等名
      第68回日本図書館情報学会研究大会
  • [学会発表] 慶應義塾図書館新収古鈔本『論語疏』巻六の文献価値2020

    • 著者名/発表者名
      住吉朋彦
    • 学会等名
      東アジア文献学の新地平―資料の還流、書目と収蔵(成均館大學校大東文化研究院)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 斯道文庫所蔵影宋本『爾雅』について2020

    • 著者名/発表者名
      矢島明希子
    • 学会等名
      斯道文庫開設60年記念フォーラム 書誌学のこれまでとこれから
  • [学会発表] 書物としての仮名日記2020

    • 著者名/発表者名
      佐々木孝浩
    • 学会等名
      日記文学会第78回大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 『源氏物語』本文研究の現在:藤原定家所持「若紫」帖発見報道を通して2020

    • 著者名/発表者名
      佐々木孝浩
    • 学会等名
      フランス日本研究学会年次総会
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 六輪一露説と世阿弥能楽論2020

    • 著者名/発表者名
      高橋悠介
    • 学会等名
      能楽学会2020年度世阿弥忌セミナー 世阿弥伝書を読む能役者―世阿弥伝書の受容・変容―
    • 招待講演
  • [学会発表] 『三国伝記』の神祇関係説話小考2020

    • 著者名/発表者名
      高橋悠介
    • 学会等名
      公開シンポジウム 『三国伝記』の宗教的研究(国際日本文化研究センター共同研究「応永・永享期文化論」研究集会)
  • [図書] 橋本経亮旧蔵 香果遺珍目録2021

    • 著者名/発表者名
      一戸渉
    • 総ページ数
      207
    • 出版者
      慶應義塾大学三田メディアセンター
  • [図書] 観世文庫所蔵能楽資料解題目録2021

    • 著者名/発表者名
      観世清和、松岡心平、横山太郎、高橋悠介
    • 総ページ数
      768
    • 出版者
      檜書店
    • ISBN
      978-4-8279-1106-0
  • [図書] 日本文学研究ジャーナル 第14号 特集 奈良・平安の漢詩文2020

    • 著者名/発表者名
      河野貴美子・高松寿夫共編
    • 総ページ数
      120
    • 出版者
      古典ライブラリ ー
  • [図書] 漢帝国の遺産 道教の勃興2020

    • 著者名/発表者名
      姜生、三浦國雄、田訪、矢島明希子共編
    • 総ページ数
      708
    • 出版者
      東方書店
    • ISBN
      978-4-497-22016-5
  • [図書] 明淸江南社會文化史研究2020

    • 著者名/発表者名
      大木康
    • 総ページ数
      788
    • 出版者
      汲古書院
    • ISBN
      978-4-762-96667-5

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公開日: 2021-12-27  

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