研究課題/領域番号 |
20H00013
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
住吉 朋彦 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 教授 (80327668)
|
研究分担者 |
佐々木 孝浩 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 教授 (20225874)
堀川 貴司 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 教授 (20229230)
河野 貴美子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20386569)
一戸 渉 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 准教授 (20597736)
矢島 明希子 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 専任講師 (20803373)
上原 究一 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (30757802)
木村 麻衣子 日本女子大学, 文学部, 准教授 (30814024)
陳 捷 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (40318580)
高橋 悠介 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 准教授 (40551502)
會谷 佳光 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (50445714)
佐藤 道生 慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (60215853)
山田 尚子 成城大学, 文芸学部, 准教授 (60537091)
大木 康 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70185213)
荒木 裕行 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (70431799)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 書誌学 / 紅葉山文庫 / 図書寮文庫 / 内閣文庫 / 蔵書研究 / 文献学 / 駿河御譲本 / 道蔵経 |
研究実績の概要 |
年度当初に若手メンバー3名を増加、原本調査のための研修を実施し、36名の態勢をとって研究を続行した。 原本書誌調査と研究については、2021年の7月から2022年2月にかけ国立公文書館内閣文庫及び宮内庁書陵部図書寮文庫において、のべ36日の調査を実施、45部386点の調査と、書誌データの作成を行った。それに基づき、8月23、24日に設定した夏季集中研討会を含む、書誌研討の会議を6回行い、国書5部、漢籍等17部の書誌データを整訂した。 原本画像のデジタル化公開については、図書寮文庫収蔵の旧紅葉山文庫本と目される漢籍32部369点のデジタル化画像22,545コマを取得、その一部は書誌の研討に使用した。さらに次年度予算の前倒し申請を行って、マイクロフィルムからのスキャンデータを加え、漢籍史部善本の約半数をデジタル化した。これらの作業の結果、徳川家康により文庫創設当初に下賜された、慶長御譲本の全部を収めることができた。 関連史料編集の事業においては、幕末に紅葉山文庫の収蔵を記録した『元治増補御書籍目録』全文の電子化を開始、図書寮文庫収蔵の清書本に拠り、検索に堪える字体に統一し、全43册中、目録本文19册の電子化翻印と公開を行った。また幕府御書物方の記録『書物方日記』未翻刻分のうち、享和元年から安政4年に至る34年分につき、書名の検出を行いデータを抽出した。これにより、未翻刻分70年のうち、全体の約半数を採録した。 これらの成果を総合するデータベースの開発について、まず本研究で継承したデジタルアーカイブ「宮内庁書陵部収蔵漢籍集覧」のIIIF化を進め、宋版『大蔵経』6264帖及び同『大般若経』全文の影像をIIIFに変更、10月8日に新サーバからリリースした。さらに予算の前倒し申請を行い、5733卷に及ぶ『大蔵経』の目次データを附加し、利用の便宜を高めるとともに、叢書収録の方式を創案した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基幹となる研究態勢の構築について、大学院後期博士課程所属の若手メンバー3名を迎え、4ヶ国36名の態勢を築けたことは、当初の想定よりも発展できたと言える。特に研究代表所属機関におけるウェブ利用の強化を受け、本研究独自にデータ共有の組織、ルールの整備、活用を行って事業を進め、従来、国外からの参加は難しかった書誌データの作成研討作業を、日本国内の研究者と共同して行う方法を考案し、実際に韓国、中国、米国の研究者が参加してデータを増加し得たことは、現況における一の基盤的な成果と言える。 感染症対策を目的とした公共機関の利用と移動の制限に大きな影響を受けたのは、本研究の柱となる図書原本書誌調査の作業であった。調査先機関との緊密な連携を図り、限定的ながら関西在住メンバーの調査参加も実現して、昨年度を大きく上回る調査点数に達することはできたが、当初の予定よりは下回り、書誌データの研討と策定の作業にも渋滞を生じた。総じてこの方面の事業の遅れには、避けがたいものがあった。 それを補うべく注力したのが、原本画像のデータ収集と、データベースシステム開発の事業である。いずれも年度半ばで予定を上回る進捗を示したことから、事業の加速を狙い、次年度予算を一部前倒しして続行、漢籍史部善本の画像収録と、大部な叢書の公開を有効にする、目録データベースの開発と実装を行うことができた。 史料編集の事業においては、前年度に準備を行った紅葉山文庫目録の電子化を実施、もっとも大部な『元治増補御書籍目録』の主部を翻印公開した。また『書物方日記』からの史料採録を着実に進め、書誌データへの関連付けを展望する位置に達したことは、予定通りの進捗であったと言える。 総じて、書誌の調査と研討の遅れを、画像の公開及びデータベースシステム開発の方面で補い、史料の編集も着実に進め得たことから、おおむね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の事業は、まず研究期間の半ばに達することから、年度当初に人的態勢を確立し、組織内での研修を完了して、継続事業の加速度的進展を目指す。 原本書誌調査の方面では、社会情況が許す限りでの調査実施を計らう。しかし次年度以降にも調査機会の限られる可能性を考慮して、先行する画像データ取得の成果を積極的に活用し、調査手順の縮約を進める。また調査範囲を厳しく限定し、漢籍では慶長・元和御譲本、国書では慶長御写本の全件収録を目標とすることにより、2022-3年度での調査完了を予定する。 デジタル化画像作成公開の事業については、漢籍善本の収録を加速し、2022-4年度前半に史部後半、子部、集部のデータ作成を行い、データベースへの搭載を実現する。これにより紅葉山文庫収蔵漢籍のうち、旧鈔本、宋元版の全部と、稀少な朝鮮版、五山版、明清版、古活字版、稿鈔本を収録できる。 史料編集の方面では、2022年度に『元治増補御書籍目録』後半、すなわち「彙刻書目」と「御書籍来歴志」の電子化を完了、紅葉山文庫蔵書の最終形をウェブ空間に提示する。さらに2023年度以降には、『元治目録』データを活用し、現存最古の『官庫書籍目録』や中間段階の『重訂楓山御書籍目録』の電子化を実施、これらをたて糸に『書物方日記』における書籍利用の記録をよこ糸として参照できるよう現存本の書誌データに結び付け、史料データを統合する。 上記の成果を用いたデジタルアーカイブ「デジタル紅葉山文庫(仮称)」の開発については、「宮内庁書陵部収蔵漢籍集覧」の改修作業によって構築してきた基幹部分を礎とし、2022年度に試作版の作成及びデータ搭載と、研究者参加機関における試験公開を行う。この新規システムでは上述の「史料データベース」と、書籍本体に闕けた情報を補足する「典拠データベース」を附加して、外部との連携をさらに有効なものとし、学術情報の中核とする方針である。
|
備考 |
上記のウェブサイトは、平成24至28年度科学研究補助金による基盤研究(A)「宮内庁書陵部収蔵漢籍の伝来に関する再検討―デジタルアーカイブの構築を目指して―」により作成し、本研究で継承、改修し、サーバを移転して管理運営するものである。
|