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2020 年度 実績報告書

音象徴進化仮説ー普遍性から言語個別性、身体性から抽象性・体系性へ

研究課題

研究課題/領域番号 20H00014
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

今井 むつみ  慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (60255601)

研究分担者 大槻 美佳  北海道大学, 保健科学研究院, 准教授 (10372880)
生田目 美紀  筑波技術大学, 産業技術学部, 教授 (20320624)
秋田 喜美  名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (20624208)
佐治 伸郎  早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授(テニュアトラック) (50725976)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード言語習得 / 言語進化 / 音象徴 / 言語の類像性 / 身体性
研究実績の概要

語彙習得の問題に関して近年注目されているのが身体性と類像性(iconicity)の役割である.類像性とは,形式と意味の間に感じられる類似性と定義される(Peirce, 1932).子どもは言語学習がはじまる以前の乳児期から視覚,聴覚,触覚などの異感覚を脳内で対応づけ,統合することができ,音象徴(「タケテ」が尖った図形と結びつくように,音と意味が偶然を越えた関係を持つ現象)やジェスチャーに代表される類像性が言語習得初期に非常に重要であるという音象徴ブートストラッピング仮説(Perniss & Vigliocco, 2014; Imai & Kita, 2014)は多くの研究者に支持されている.
他方で異言語比較研究では,身体とのつながりが強いオノマトペでも,個別言語の音韻体系に大きく制約された恣意性をもつことも示された(Saji et al., 2019).このことは,身体に接地しながらどのように記号の抽象化が進んでいき,子どもが言語習得の過程でどのように抽象的な概念を身体化していくのかという問いこそが重要であることを示す.本研究では,こういった記号接地問題(Harnad, 1990)と呼ばれる問題を解明するために,音象徴の進化の過程に焦点をあて,生物学的要因を基盤とする類像性が文化的,言語学的な要因とどのように相互作用するのかを,言語学,認知心理学,数理心理学,神経心理学,フィールド言語学の学際的な共同研究によって,多角的,多層的に明らかにするため,言語共通の音象徴性と言語固有の音象徴性を作り出す要因の同定や聴覚障がい者の音象徴性に関する調査・分析を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

I)言語共通の音象徴性と言語固有の音象徴性を作り出す要因の同定,のテーマにおいては日本語・英語・チェコ語の各言語の話者が, 触覚や移動形態のモダリティにおける刺激に対してどのような特徴を見出し,それに対してどの音を用いて表すかという,意味評定と音産出が対応した音象徴データの収集準備を始めるべく刺激素材の作成と修正,日本における予備実験を行う。II)音象徴性の感覚の発達過程の検討, のテーマにおいては日本語,英語,トルコ語の異言語比較発達研究を行う.対象年齢は2歳半と5歳の2群とし, 提示刺激の検討を開始する. III)聴覚障がい者の音象徴敏感性の検討, 音象徴を感じさせるのは周波数などの音響的な要因なのか,言語音を発生させる口腔や唇の調音的運動なのかは,言語学や認知科学の分野で長く議論されているが,決着がついていない.聴覚障がい者が残された聴力に関わらず音象徴を感じるとしたら音象徴の感受性には発声運動によりもたらされる概念との類像性が重要ということがわかり,音象徴進化仮説A-Cに対しても重要な示唆を与える.I)により作成した刺激を用いて予備的に調査を実施する.IV)音象徴の脳内基盤の検討, 健聴乳幼児と反対の過程,つまり失語という言語の喪失の過程から音象徴進化仮説の検討をする.音象徴を感じる脳内機序と損傷脳における言語の研究では,語想起障害が出現しても,オノマトペは他の語よりも残存しやすい(障害されにくい),あるいは,語の想起ができない場合,様々なヒント(語頭音や類似語など)の中で,オノマトペが他の語よりも有効なヒントとなりえることなどが古くから報告されており,オノマトペが,恣意性の高い一般語彙と異なる側面を有していることを示している.単独で限局した病巣の失語症患者を対象に,オノマトペ,恣意性の高い語群について,理解および想起を検討する.

今後の研究の推進方策

I)言語共通の音象徴性と言語固有の音象徴性を作り出す要因の同定のテーマにおいては日本語・英語・チェコ語の各言語の話者が, 触覚のモダリティにおける刺激に対し,どのような音韻的な特徴を持つ音を用いるのかという,意味評定と音産出が対応した音象徴データの収集を行い刺激素材の作成と修正をする。II)音象徴性の感覚の発達過程の検討, のテーマにおいては日本語,英語などの異言語比較発達研究を行う.提示刺激の検討準備をする. III)聴覚障がい者の音象徴に関する回答を検討することで, 音象徴を感じさせるのは周波数などの音響的な要因なのか,言語音を発生させる口腔や唇の調音的運動なのかは,言語学や認知科学の分野で長く議論されているが,決着がついていない.聴覚障がい者が聴力に関わらず音象徴を感じるとしたら音象徴の感受性には発声運動によりもたらされる概念との類像性が重要ということがわかり,音象徴進化仮説A-Cに対しても重要な示唆を与える.I)により作成した刺激を用いて予備的に調査を実施する.IV)音象徴の脳内基盤の検討, 健聴乳幼児と反対の過程,つまり失語という言語の喪失の過程から音象徴進化仮説の検討をする.単独で限局した病巣の失語症患者を対象に,オノマトペ,恣意性の高い語群について,理解および想起を検討する.

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 図書 (2件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] Sabanci University(トルコ)

    • 国名
      トルコ
    • 外国機関名
      Sabanci University
  • [国際共同研究] Univerzita Karlova v Praze(チェコ)

    • 国名
      チェコ
    • 外国機関名
      Univerzita Karlova v Praze
  • [国際共同研究] University of Warwick(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University of Warwick
  • [国際共同研究] Temple University/Trinity University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Temple University/Trinity University
  • [雑誌論文] Learning Individual Verbs and the Verb System: When Are Multiple Examples Helpful?2020

    • 著者名/発表者名
      Imai Mutsumi, Childers Jane B.
    • 雑誌名

      Language and Concept Acquisition from Infancy Through Childhood

      巻: - ページ: 131~158

    • DOI

      10.1007/978-3-030-35594-4_7

    • 国際共著
  • [雑誌論文] Culture, Language, and Thought2020

    • 著者名/発表者名
      Imai Mutsumi, Kanero Junko, Masuda Takahiko
    • 雑誌名

      Oxford Research Encyclopedia of Psychology

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1093/acrefore/9780190236557.013.579

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] SONY「オノマトペの認知科学」2021

    • 著者名/発表者名
      今井むつみ
    • 学会等名
      Research and Development Section講演
    • 招待講演
  • [学会発表] Evolution of verb meanings in children and L2 adult learners through reorganization of an entire semantic domain: The case of Chinese carry/hold verbs.2021

    • 著者名/発表者名
      Mutsumi Imai
    • 学会等名
      Chinese University of Hong Kong Seminar for the Department of linguistics and modern languages. (online)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 英語論文投稿への道2020

    • 著者名/発表者名
      今井むつみ
    • 学会等名
      日本心理学会 日本心理学会企画シンポジウム1
    • 招待講演
  • [学会発表] Exploitation of iconicity in Hard-of-Hearing and Hearing individuals. Talk presented at the British Cognitive Linguistic Society Preconference Workshop2020

    • 著者名/発表者名
      Mutsumi Imai
    • 学会等名
      Iconicity in language: theoretical issues and future directions.
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] Numeral Classifiers and Classifier Languages: Chinese, Japanese, and Korean2020

    • 著者名/発表者名
      Edited By Chungmin Lee, Young-Wha Kim, Byeong-Uk Yi
    • 総ページ数
      284
    • 出版者
      Roudledge.
    • ISBN
      1138054976
  • [図書] 英語独習法2020

    • 著者名/発表者名
      今井 むつみ
    • 総ページ数
      282
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      9784004318606
  • [備考] 今井むつみ研究室

    • URL

      https://cogpsy.sfc.keio.ac.jp/imailab/

  • [備考] ABLE ARCHIVES

    • URL

      https://cogpsy.sfc.keio.ac.jp/ablearchives/

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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