研究課題/領域番号 |
20H00028
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大野 正夫 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (00251413)
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研究分担者 |
山本 裕二 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (00452699)
足立 達朗 九州大学, 比較社会文化研究院, 助教 (00582652)
渋谷 秀敏 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (30170921)
田尻 義了 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (50457420)
畠山 唯達 岡山理科大学, フロンティア理工学研究所, 教授 (80368612)
齋藤 武士 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (80402767)
桑原 義博 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (90281196)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 考古地磁気 / 地磁気強度 / 年代推定 / 地磁気永年変化 |
研究実績の概要 |
本研究では、主として地磁気の強度の永年変化を用いた、過去三千五百年間の遺跡・遺物の年代決定の方法の確立を目指し研究を進めている。そのためこれまでは年代推定への適用が困難であった強度の標準曲線を新たに確立し、最終的に方位・強度の標準曲線を統合して、年代が未知の遺跡において数十年以内の精度で年代を測定する手法の確立を目標としている。 昨年度に引き続き、九州大学筑紫キャンパスの御供田遺跡で出土した弥生中期初頭から弥生後期後半の土器資料の古地磁気強度測定を行った。具体的な実験としては、全自動交流消磁装置付きスピナー磁力計の感度での測定の困難な磁化強度の弱い一部の資料をのぞいたそれ以外の資料について、綱川―ショー法による古地磁気強度推定実験を行った。また一部のパイロット資料については、IZZIテリエ法による古地磁気強度推定実験を行い、綱川―ショー法による結果と比較して検討した。これらに加え、古地磁気強度推定実験の対象とした資料を中心に、岩石磁気学的な分析と考察も行った。とくに資料の断面の観察からは、磁化強度の弱い資料は中央部が黒色であることが多いことが認められた。弥生土器の焼成過程に関する先行研究では、この黒色層は還元的に焼成されたことに起因するとされている。今回の資料について、還元的な焼成にもかかわらず、同様の環境で作成される須恵器とはことなり温度が不足しているため、磁性を担うマグネタイトが生成されなかったと考えると整合的である。 また、鹿児島大学構内遺跡より弥生土器(前~中期)試料を取り寄せ、綱川-ショー法による古地磁気強度測定を行った結果、前期から中期後葉にかけてだんだんと現象する様子が見られ、中期部分は御供田遺跡の結果と調和的であった。 これまでに得られた研究成果の一部について、日本地球惑星科学連合大会、地球電磁気・地球惑星圏学会大会、日本文化財科学会等で、成果発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、御供田遺跡で出土した弥生中期初頭から弥生後期後半の土器資料の強度測定実験を行った。綱川―ショー法とIZZIテリエ法による古地磁気強度測定実験により、信頼度の高いデータが蓄積されつつある。目標とする強度の標準曲線について、弥生中期初頭から弥生後期後半の年代で強度が上昇する傾向がよりはっきりと見えつつあるなどの成果が挙がっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、引き続き採取済試料の古地磁気強度の測定実験を進めることで弥生中期初頭から弥生後期後半の強度の標準曲線の完成を目指す。さらに今後、年代を広げて新たな資料を採取し、過去3千5百年間の地磁気強度標準曲線の完成を目指す。また考古地磁気強度測定実験について、これまで検討してきた考古試料に特化した新しい実験手法をさらに吟味し、その完成を目指す。
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