研究課題/領域番号 |
20H00032
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
吉村 武彦 明治大学, 文学部, 名誉教授 (50011367)
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研究分担者 |
加藤 友康 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (00114439)
中村 友一 明治大学, 文学部, 専任准教授 (00553356)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 墨書土器 / 刻書土器 / 出土文字史料 / データベース / 墨 / 日本古代史 / 歴史考古学 |
研究実績の概要 |
研究の基礎となる墨書土器の研究文献目録は、『史学雑誌』等の学術雑誌や大学図書館等の各種雑誌・報告書等から作成している。ただし、コロナ・パンデミックが発生し、2020年度の前半は図書館が使えなかったので、この作業も遅れざるをえなかった。目録は全国の墨書土器調査・研究者の共有データとして利用されているので、最新版(2296件)としてホームページ上に公開したい。 2020年度の中心的な研究課題は、研究目的となっている「双方向ネットワーク環境を活用したオンラインによる日本墨書土器データベースの構築」を運用することである。そのため新しいソフトウェア・ハードウェアを利用したサーバの創設であった。新サーバの設置は、業務委託したブロードバンドジャパン(BBJ)側の作業であるが、ホームページ上のデザインの協議を重ねるとともに、従来のデータを新サーバのソフトウェアに対応できるように、データを全面的に改定する必要があり、集中して作業を実施した。想定以上に時間がかかり、ようやく年度後半に至って作業を完了し公開した。 データベースの作成はコロナ禍のなかで、各地の博物館等にでかけて調査・研究することが不可能となった。そのため明治大学におけるデータ集成と奈良文化財研究所が公開している報告書PDFを利用して集成することしかできなかった。栃木・群馬・山梨・岐阜・静岡・徳島・佐賀・長崎県のデータ集成の準備を進めた。従来の研究成果をまとめるため、2022年度に『墨書土器と文字瓦ー出土文字史料の研究ー』(八木書店)を出版すべく、編集原案を作成し、関係者以外にも執筆を依頼することにした。 地域研究としては、引き続き千葉県市川市を対象に、市川市史編纂と連携した。コロナ禍のなかで、今年度は福岡の九州歴史資料館で墨書土器を調査するしかできなかった。旅費の大半は繰越を申請せざるをえなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、コロナ禍のために大学図書館・博物館図書室の利用が一時不可能となり、研究文献の集成や、データベースを構築するための都道府県調査の作業が困難になった。前半は特に厳しかった。墨書土器の調査に関しては、出張の予定が立てられず、11月に九州歴史資料館における調査がせいぜいであった。そのため、旅費の大半は翌年度への繰越申請を行って、承認された。 ただし、最大の課題であったのは双方向のネットワーク環境を活用したオンラインによる日本墨書土器データベースの構築について、ソフトウェア・ハードウェアの刷新をともなった新サーバの創設であった。業務委託したブロードバンドジャパン(BBJ)側と対面・電話・メールのやりとりを通じて、年度後半になって「全国墨書土器・刻書土器、文字瓦 横断検索データベース」として公開することができた(2020年12月31日付)。公開にあたっては、データベース検索における注意事項の同意を求め、「全文検索(部分一致)・詳細検索・全件表示」のバナーを設け、利用者の便宜を考慮した制度設計とした。明治大学が蓄積した文字瓦のデータベースと連携したので、木簡以外の主要な出土文字史料である墨書土器と文字瓦のデータベースとして基本的システムが完成したことになる。この公開に想定以上の時間を要したうえ、当初は同時併行で墨書土器データベースの充実を計画していたが、コロナ禍の影響でデータの集成は大幅に遅れている。 新しい検索データベースの公開は、古代史・考古学における文字調査・研究において画期的なツールと自負しており、奈良文化財研究所(奈文研)の木簡データベースを含めると、日本列島出土の文字史料の大半を公開上で自由に知ることが可能となった。本ダータベースは、国内外において利用が可能であり、漢字文化圏の古代研究に資することは大きいので、(3)の評価にした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題としては、我々データベース作成者と利用者による双方向性をもたした「全国墨書土器・刻書土器、文字瓦 横断検索データベース」の運用を、安定的かつ安全にすることである。「安定」とは、常時、国内外の研究者が利用できる体制を維持することであり、「安全」とは各種のウィルス攻撃を防御するシステムを保持することである。そのためには、サーバ設計者(ブロードバンドジャパン)と明治大学のシステム管理者との日常的な管理態勢を築いていくとともに、利用者の要望に応えていくことが重要である。こうした安定的かつ安全な運用を第一に心がけたい。 ついで全国の都道府県の墨書土器データベースの充実化である。コロナ禍のなかで、従来のように拡充させることは難しいのであるが、明治大学(中央図書館と博物館図書室)で集成できないデータの報告書・調査書などは、各都道府県で公開されている報告書等の電子媒体を利用するほか、寄贈等の手段を利用して集め、データを集成することである。コロナ禍の状態が改善されれば、直接出かけて集成することが可能となるが、予断を許さない状態が続けば、難しい課題となる。 そして、データの集成だけにとどまらず、構築した「全国墨書土器・刻書土器、文字瓦 横断検索データベース」を利用して、多様な墨書土器研究の総括研究を進めることである。この面に関しては、『墨書土器と文字瓦』の刊行に向けて、4部構成で28項のテーマを立てた企画を立案した。必要な研究課題を網羅したので、墨書土器研究を地道に発展させていきたい。編集委員4名(吉村・加藤・中村と研究協力者の川尻秋生)の総力を結集して取り組んでいきたい。データベースと総括的な研究指針が揃ってこそ、墨書土器研究を推進していくことが可能となる。
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備考 |
「全国墨書土器・刻書土器、文字瓦 横断検索データベース」は検索用のデータベース。 「墨書・刻書土器」は都道府県別のデータベースである。
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