研究課題/領域番号 |
20H00035
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
箱崎 真隆 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (30634414)
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研究分担者 |
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60270401)
佐野 雅規 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師(任期付) (60584901)
木村 勝彦 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (70292448)
三宅 芙沙 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (90738569)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 酸素同位体比年輪年代法 / 炭素14年代法 / 炭素14スパイク / 気候復元 / 太陽活動復元 / 暦年較正 |
研究実績の概要 |
今年度は2つの突発的事態によって大幅な計画変更を余儀なくされた。1つは新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言である。在宅勤務を2ヶ月にわたって強制され、その間、出張調査と実験ができなくなった。もう1つは、豪雨の影響で岐阜県瑞浪市大湫町大湫神明神社の御神木の大杉が7月11日に倒壊したことである。この大杉は推定樹齢1300年とされ、本州では極めて貴重な高齢現生木とみられたことから、緊急調査を実施した。地元の意向や関係する研究機関の都合から、この大杉の調査と分析を最優先で進めなくてはならなくなり、ただでさえ少なくなったエフォートをこちらに大きく割くことになった。酸素同位体比年輪年代法と炭素14年代法によって、大杉の真の樹齢は670年と判明した。推定樹齢の約半分であり、1000年以上にわたる長期的な気候変動・太陽活動の復元はできないとわかったが、一方で、非常に成長が良く、各年の年輪幅が広いことがわかった。すなわち、年輪をさらに細かく分割して分析することが可能で、この大杉を使えば季節・月単位の気候変動・太陽活動の復元ができる可能性があり、新たな応用研究の道が拓けた。 そのほか、4.2-4.3kaイベントの精密復元に向け、三方低地黒田埋没林の酸素同位体比分析を実施し、データの上積みをはかった。また、このデータをもとに構築した標準年輪曲線によって、福井城跡から出土した縄文時代後期の広葉樹の埋没木に誤差のない暦年代を与えることができた。これらの広葉樹からは年輪幅のデータも得られており、今後、各樹種の年輪幅の標準年輪曲線の核として利用できる可能性がある。このほか、鹿児島県の遺跡出土木材から3000年前前後の炭素14データを得ることができ、IntCalとの挙動の違いが明らかとなった。なお、予定していた屋久島の調査は新型コロナウィルスの感染状況をみて、次年度以降に実施することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの影響で、調査や実験計画の大幅な見直しを余儀なくされた。しかし、プロジェクトの発展に有望な新規試料の獲得や、既存試料からのデータ獲得を進めることができ、被害は最小限に食い止めることができた。国内外への成果公表も果たすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
自治体や研究機関の方針がバラバラであることから、全国民に新型コロナウィルスのワクチンが行き届くまで、分担者と合同での宿泊を必要とする長期の出張調査は難しいと考えている。したがって、当初予定していた屋久島での鬼界アカホヤ埋没木の採取は、当面延期する見通しである。ただ、2020年の春のような、強制的な移動制限および在宅勤務となる可能性は低いことから、当面は手持ちの試料の分析を進め、酸素同位体比ならびに炭素14データを蓄積し、高精度年代測定、気候復元、太陽活動復元の可能な範囲を拡張していく。
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