研究課題/領域番号 |
20H00047
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森田 敦郎 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (20436596)
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研究分担者 |
篠原 雅武 京都大学, 総合生存学館, 特定准教授 (10636335)
箭内 匡 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20319924)
田辺 明生 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30262215)
大村 敬一 放送大学, 教養学部, 教授 (40261250)
津田 和俊 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 講師 (40545076)
結城 正美 青山学院大学, 文学部, 教授 (50303699)
中野 佳裕 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, 次席研究員(研究院講師) (60545218)
鈴木 和歌奈 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD) (70768936)
モハーチ ゲルゲイ 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (90587627)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 人新世 / 持続可能性 / 社会運動 / 科学技術 / 気候変動 |
研究実績の概要 |
2020年度は研究組織の立ち上げを行い、理論的枠組みの構築を中心とした研究を行った。当初は、国際共同研究ネットワークの構築や海外での調査を予定していたが、新型コロナウィルスのパンデミックによりこれらをオンライン上での活動に切り替え、一部の活動については2021年度に繰り下げして実施した。また、この状況に対応するための新たな調査手法の開発を行うこととし、デジタル技術を用いた調査法、DIYや技術的な実践を研究者が自ら(調査対象者らとともに)行う実験的な手法の開発を行った。 理論的な枠組みの構築にあたっては、Bruno Latour, Dipesh Chakrabarty らの人新世に関する哲学的考察を取り上げて検討し、特にこれらの議論が人類学を中心とした経験的な社会科学にとって持つ意義を検討した。この過程の中で、スピノザ哲学に基づく情動に注目した社会理論が、人新世における環境と人間社会の新たな関係を理解する上で重要な意義を持つことが明らかになった。そこで、スピノザ哲学と人類学、科学技術論の理論との関係についての検討を行った。 調査においては、各研究者がそれぞれのフィールドにおいてコンタクトを開始し、調査の準備を進めた。一方で、フィールド訪問が困難な状況に対応すべく、オンライン上のデジタルデータをアルゴリズム等を用いて収集分析するデジタル・メソッドの導入を行った。今年度は、文献をレビューして、基本的な技術を習得するとともに、調査の初期段階における情報収集をデジタルツールを用いたウェブサイトのネットワーク構造の検出と分析によって支援もしくは部分的に代替することを試みた。これにより、フィールドを訪問できない状況の中でも、調査対象に関する幅広いデータをデジタル・ツールによって収集することが可能であり、計量的・質的方法を用いて分析することが可能であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍によってフィールドワークの実施が困難になり、特に海外での調査の実施に大きな制約がかかった。こうした状況に対応するためにデジタルツールを用いてウェブ上のデータを収集・分析する新たな研究手法を導入した。さらに、一部研究活動を翌年度に繰り越したことにより、フィールド調査の困難を補うだけの調査研究を行うことができた。 また、フィールド調査が困難な状況に適応して、理論的な研究を集中的に進めた。その結果、人新世についての人文社会科学分野での理論研究のレビューと分析については当初想定していた以上の進捗があった。 これらを総合すると概ね計画通りに進捗していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
限定的ながらフィールド調査の開始の目処がつきつつあるため、可能な限りフィールド調査を実施できるよう努力する。一方で、コロナ禍の完全な収束については不透明な状況が続くため、デジタル・メソッドなどを用いた代替的な調査方法を活用して、フィールドワークの制限を補うような調査研究を実施する。 理論的な研究においては、LatourやChakrabartyが論じる「惑星的なもの」の概念が重要な課題として浮上してきた。この概念を、人新世をめぐる地球システム科学、哲学、社会科学の流れの中に適切に位置づけ、批判的に検討することが今後の重要な課題となる。さらに、こうした理論的な理解を踏まえた上で、「惑星的なもの」と気候変動に対処しようとする人々の日常的な実践の間の関係を捉える調査の枠組みを構築する必要がある。理論研究では、こうした調査枠組みの構築を視野に入れた、概念整理に力を入れていく。また、こうした理論的な整理とフィールド調査における新たな調査法の導入との間に整合性が取れるように留意してプロジェクト全体をコーディネートしていく。特に、予測がつかないコロナ禍の展開に適応して研究を進捗させるために、代替的な手法の活用などを積極的に行う。
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