研究課題/領域番号 |
20H00050
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
關 雄二 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 教授 (50163093)
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研究分担者 |
坂井 正人 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (50292397)
瀧上 舞 山形大学, 人文社会科学部, 学術研究員 (50720942)
鵜澤 和宏 東亜大学, 人間科学部, 教授 (60341252)
井口 欣也 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (90283027)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 考古学 / 文化人類学 / 文明 / 権力 / 社会的記憶 |
研究実績の概要 |
本年度は、コロナ禍で日本人研究者によるペルーでの調査は断念したが、11月より一ヶ月ほどペルー北高地カハマルカ州チョタ郡ケロコト郡に位置するラ・カピーヤ遺跡の発掘調査を海外共同研究者によって実施した。具体的には防御用の溝構造が複数検出され、インカ直前(後1300~1500年頃)の社会のコンフリクト状況を示すデータが得られた。この場合、防御される区域の狭さから、祭祀空間の防御であった可能性が高い。ラ・カピーヤ遺跡では、形成期(前1000年~前700年)にさかのぼる祭祀遺構が検出されていることから、今後は、聖なる空間としての継続的利用がどのような仕組みで可能となったのかを追究していきたい。 このほか、これまで蓄積してきた大量の図面や写真資料のデジタル化を進めるとともに、研究成果をまとめることに尽力を注いだ。とくに日本人類学会誌であるAnthropological Scienceにおいて、本プロジェクトに関する特集を組むことができたのは意義深い。そこには、祭祀空間におけるラクダ科動物の供犠の意味を問う論や、アンデスの儀礼に欠かすことができないトウモロコシの栽培とラクダ科動物などの家畜飼養との関係を明らかにする論などが含まれ、儀礼の実態に迫るデータの提示がなされた。反復的に行われる儀礼が、世界観や社会的記憶を形成することからすれば、これらのデータの意義は大きい。また、本研究プロジェクトの分担者と協力者の総力を結集し、アンデス文明全体を視野に収めた『アンデス文明 ハンドブック』を刊行できた点も成果の一つである。 こうした研究成果は、オンラインにより国内外の研究集会で公表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
考古学的調査においては、コロナ禍により、日本人研究者の海外渡航(ペルー)ができず、調査データの収集や分析に遅れが生じていることは事実であるが、情報機器を駆使したリモート会議を頻繁に行い、現地のカウンターパートによる発掘を遠隔で評価し、データを共有することができたため、大幅な研究停滞を招かずにすんだ。ただし、サンプル抽出作業ができなかったため、人骨、獣骨などを用いた科学分析に遅れが認められる。今後は、日本に保管されているサンプルの再分析なども視野に入れながら、コロナ禍での研究に備えたい。 一方で、日本にとどまった時間を有効に活用し、これまでの研究データの分析と公表ができたことは、本プロジェクトを相対化し、新たな課題を抽出できた点で有意義であった。オンラインで頻繁に実施した研究会は、コロナ禍以前よりも、分担者や協力者間のコミュニケーションを密にすることができたと考えられ、実際に、学会誌での特集や、編著書の発行へとつながった。こうした点からも、全体として研究の進捗にやや停滞はみとめられるものの、新たな研究活動によって遅れを挽回しつつあると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、コロナ禍により、インターネットを通じた遠隔調査を試み、一定の成果をあげることができたが、再現が困難な研究手法である発掘の場合、やはり調査現場で直接、指揮を執る方が望ましい。そのため、令和4年度には、令和3年度の繰り越し分の予算を利用し、まずは研究代表者のみがペルーにおいて現地調査を再開することとした。これは、調査地における新型コロナウイルス感染症の蔓延状況を見極め、調査許可を司るペルー文化省のガイドラインの有無や外国人研究者の受け入れ体制を確認する必要があると判断したからである。この結果次第で、出土遺物の考古学的分析や科学分析の担当者の派遣の可否を順次決定していく。 その間、研究分担者においては、引き続き、これまで蓄積してきたデータの成果公表に努め、また国内の諸機関に保管されている研究資料の調査と分析を進めていく。また蓄積した一次資料のデジタル化も引き続き実施していく。これらの方針を令和4年度の初めの研究会を通じて分担者、協力者と共有していく。
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