研究課題/領域番号 |
20H00072
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
市村 英彦 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (50401196)
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研究分担者 |
川田 恵介 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (40622345)
川口 大司 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (80346139)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 政策評価 / パネルデータ / 自治体間移動 / 地域労働市場 / 介護需要 |
研究実績の概要 |
1980年から2015年の国勢調査を用いた長期に渡るパネルデータ構築のための準備を進めた。特に、調査区が恒久的な地域区分で管理される以前の1980年から 1995年のデータを用いたマッチング方法についての研究を進めた。恒久的な地域区分が使用されていない場合、詳細な住所情報(文字情報)を活用することで調査区を異なる調査年において接続できる可能性を見出した。そこで詳細な住所情報の所在を調査し、データベース化する準備を進めた。
こうした準備をもとに国勢調査の小地域情報を用いた分析が可能になり、福島第一原子力発電所事故の後の放射能災害で人々がどのような移住をしたのかの分析を進めている。また、地域労働市場の分析として国勢調査を用いたマッチング手法を応用し部分的にパネル化した労働力調査を用いた分析を行った。特にCOVID-19が日本の 地域労働市場に与えた影響を包括的に解明する手法として、機械学習法とセミパラメトリック推定法を融合した手法の応用を行った。分析の結果、パネルデータ化した政府統計を用いることで、推定精度が大きく向上することを確認することができた。分析の結果は日本経済学会において報告されたほか、Japanese Economic Reviewに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1980年から2015年の国勢調査を用いた長期に渡るパネルデータの構築方法について研究を進めている。長期的なパネルデータの構築には住所情報の正規化が重要であることがわかり、データ構築に向けた準備を進められている。
こうした準備をもとに、国勢調査の小地域情報を用いて福島第一原子力発電所事故後の土壌の放射能汚染の度合いを接合した。事故前の2010年と事故後の2015年の情報の比較によって、どのような属性を持つ個人が汚染の程度が高い地域から流出したかを分析した。地域労働市場の分析では、国勢調査を用いたマッチング手法を応用し、部分的にパネル化した労働力調査を用いた分析を行った。特にCOVID-19が日本の地域労働市場に与えた影響を包括的に解明する手法として機械学習法とセミパラメトリック推定法を融合した手法の応用を行った。その結果パネル化した政府統計を用いることで、推定精度が大きく向上することを確認した。これは労働市場データのようなpersisitencyが一般に大きいデータ分析における大規模パネルデータの有用性を示す。またデータ主導型の効果の異質性推定を試みた結果、明確な異質性の検出に成功し、(擬似的)ノンパラメトリック推定の有用性を確認できた。分析の結果は日本経済学会において報告されたほか、Japanese Economic Reviewに掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
1980年から2015年までの長期間における国勢調査の接続を行うためには、住所情報(文字情報)のデータ化が必要であるため必要なデータを収集し 電子化の作業を進める。国勢調査年毎に長期の擬似パネルデータを用いて政策評価を行う分析手法を開発し、開発した手法を用いて政策評価を行う。また国勢調査のみでは不足する情報を補う為、人口動態調査、国民生活基礎調査など他の政府統計や、介護レセプト情報などと国勢調査のマッチングを行い、より詳細な情報に基づく政策評価を行う方法を検討する。さらに、作成したデータを用いて、これまで日本で作成されているパネルデータの母集団代表性を吟味する。
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