研究課題/領域番号 |
20H00097
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
松塚 ゆかり 一橋大学, 森有礼高等教育国際流動化機構, 教授 (80432061)
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研究分担者 |
米澤 彰純 東北大学, 国際戦略室, 教授 (70251428)
小塩 隆士 一橋大学, 経済研究所, 教授 (50268132)
森口 千晶 一橋大学, 経済研究所, 教授 (40569050)
水田 健輔 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構, 研究開発部, 教授 (30443097)
大場 淳 広島大学, 高等教育研究開発センター, 准教授 (50335692)
吉田 香奈 広島大学, 教育本部, 准教授 (30325203)
苑 復傑 放送大学, 教養学部, 教授 (80249929)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | モビリティー / パスウエイ / 高等教育 / 教育財政 / 格差 |
研究実績の概要 |
令和5年度の研究計画に沿って以下の研究を実施した。 ① 高技能者の履歴分析: 令和4年度末に研究倫理審査で承認された研究計画を遂行した。具体的には工学分野で米国の博士号を取得したアジア圏出身者のデータを分析し、その結果をデータ改善に反映させた。同時に社会科学、理学・医学・保健、人文・教育分野で米国の博士号を取得したアジア圏出身者のデータベース(DB)を仕上げ、試行分析を始めた。さらに、欧州出身者を対象に同様のDBを構築した。DB構築の作業は研究代表者のもと、科研費技術員と研究補助員を中心に行った。分担研究者からDB構築及び統計解析に関するアドバイスを得て分析方法を改善した。 ② 移動と地域特性との関係分析: 教育財政や経済環境が学生や就労者の移動性に与える影響を分析するために、OECDの教育データ、World Bankの経済データ、UNESCOの学生移動データ等からなるDHEM(Database for Higher Education Mobility)を更新し、これに①の履歴DBを統合する準備を整えた。DHEM自体は本科研の研究チームを越えて使用を促す方針へと転換するため、データ使用の汎用性を高める加工を行った。 ③ 大学及び行政の政策・制度調査: 日本、米国、英国、フランス、中国を対象に、各国を専門とする研究分担者が研究を進めた。研究分担者1名は中国を訪問し 北京大学、人民大学、清華大学等でインタビュー調査、情報・資料収集を行った。他国についても各国の研究協力者と連携して情報を収集するとともに、政府と大学の留学他モビリティー政策、財政政策、奨学金制度等に関する研究を進めた。 上記活動及びこれに関連する研究成果は、国際学術学会並びに研究集会で発表するとともに、論文及び書籍にして出版した。また、中間成果発表として7月に国際シンポジウムを開催した。具体的情報は発表実績欄に記す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由から、当初の計画に沿っておおむね順調に進展している。 ① 円安の影響により計画していた北米への海外調査を実施することができなかったものの、UW College of Educationの Maresi Nerad教授ほか高等教育研究の第一人者複数名と密に連絡を取り合い助言と情報を得た。それらの成果と実証的研究結果を併せて7月に開催した国際シンポジウムで発表し、本研究事業の国際連携と共同研究を大幅に進展させた。また、同じく円安の影響により欧州での海外調査が実現しなかったものの、海外研究協力者との連携に加えて、研究分担者の予算による欧州出張の機会に得た情報や知見を共有していただき、成果に結び付けることができた。 ② 学術分野の教員・研究者と学術分野以外の研究者あるいは専門職者との双方を対象にDB構築を行ったため対象国を拡大する展開に時間を要し国単位の経済・教育指標のマクロデータ統合分析が遅れているものの、DB構築の全体行程は早まっており国が揃った時点で統合分析を一斉に行う準備を整えている。また負担をあまり増やさずに中北南米出身者のデータを収集できることがわかり、DBを一層充実させることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度の研究推進方策を本研究の三つの目的に沿って示す。 ① 高技能者の履歴分析: 令和5年度に着手した工学分野で米国の博士号を取得したアジア圏出身者のデータ分析結果を学術誌に投稿する。開発を終えた社会科学、理学・医学・保健、人文・教育分野で米国の博士号を取得したアジア圏出身者のデータベース(DB)の本格的分析に入り、成果を発表・投稿する。欧州と米国出身者のDBは8月中に構築を終わらせ分析対象とする。DB構築は研究代表者のもと、科研費技術員を中心に遂行し、研究分担者の助言を活かして継続的に改善する。 ② 移動と地域特性との関係分析: DHEM(Database for Higher Education Mobility)を更新し、これに①の履歴DBを統合・分析することにより、国や地域単位のマクロ環境(経済力、雇用動向・条件、労働需要、格差指数、教育予算、科学技術指標等)が高技能者の移動に与える影響を分析する。 ③ 大学及び行政の政策・制度調査: 日本、米国、英国、仏国、中国を専門とする研究分担者が引き続き研究を進める。円安による渡航の制約を克服するために、海外研究協力者との連携を一層強化し現地の情報を収集する。留学他モビリティー政策及び奨学金制度をめぐる政府機関や大学の政策、制度、課題について量質両方の情報を依頼や協働によって収集し分析する。モビリティーを支える教育財政の在り方をまとめる。 *研究費はデータ構築と分析補助のための人件費と謝金、データ管理費、会議開催(参加)費、学術誌への投稿・掲載費、校閲・出版費、研究協力者への謝金等に使用する。 *4月に開催した国際研究会議及び研究協議を軸に国際共同研究をさらに発展させる。また、分担者及び研究協力者間で密に研究会を行い個々の成果を鍛錬させると同時に包括的な見地で議論を重ね、学術論文を書籍としてまとめる段取りを進める。
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