研究課題/領域番号 |
20H00106
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研究機関 | 白百合女子大学 |
研究代表者 |
菅原 ますみ 白百合女子大学, 人間総合学部, 教授 (20211302)
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研究分担者 |
相澤 仁 大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (00754889)
榊原 洋一 お茶の水女子大学, 名誉教授 (10143463)
室橋 弘人 金沢学院大学, 文学部, 講師 (20409585)
川島 亜紀子 (小林亜紀子) 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20708333)
舟橋 敬一 埼玉県立小児医療センター (臨床研究部), 精神科, 副部長 (30383269)
松本 聡子 お茶の水女子大学, 人間発達教育科学研究所, 講師 (30401590)
齊藤 彩 お茶の水女子大学, 教学IR・教育開発・学修支援センター, 講師 (30794416)
吉武 尚美 順天堂大学, 国際教養学部, 准教授 (40739231)
加藤 曜子 流通科学大学, 人間社会学部, 非常勤講師 (90300269)
田中 麻未 千葉大学, 社会精神保健教育研究センター, 特任講師 (90600198)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 養育環境リスク要因 / 小児期逆境体験 / レジリエンス / 生涯発達 |
研究実績の概要 |
本研究では、予防医学で始まった小児期逆境体験(Adverse Childhood Experiences: ACEs)研究と発達心理学の逆境の累積リスク(Cumulative Risk:CR)研究を統合的に継承し、①乳児期から測定を行い成人前期に達した長期縦断サンプルを対象とした追跡調査を実施し養育環境リスクの影響性と影響防御メカニズムについて検討すること、②追跡研究で明らかにされた防御過程について幅広い年齢段階にある一般人口を対象とした大規模web調査を実施して検証すること、③①②の結果をもとに養育環境リスクの早期発見と介入に資するアセスメントツールの開発を試みること、の3点を目的としている。2020年度は、以下の4点について研究を進めた:1)小児期逆境体験(ACE)及び逆境の累積リスク(CR)に関する内外の研究の総覧をおこない、本研究で用いる測定尺度の選定をおこなった。研究の過程のなかでACEを緩和する保護的・補償的体験尺度(Protective and Compensatory Experiences:PACEs)を見出し、原作者に許可を得た上で日本の状況に適用可能な日本語版尺度を開発した。2)パンデミック状況のなかでの調査実施となったため、コロナ禍に関するストレス尺度やオンラインサポート等に関する新たな尺度の適用が必要となり、関連する複数の尺度について翻訳や開発をおこなった。3)①②を経て立案された調査票を用いて、追跡調査の対象者と重なりの多い年齢層である全国の大学生(4年制・6年制)を対象とした予備調査を実施した(N=4,120名)。4)『Adverse and Protective Childhood Experiences:A Developmental Perspective』(APA Publishing, 2020)の翻訳権を取得し出版準備を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため追跡調査の実施時期が繰り下げとなり年度を繰り越しての実施準備となった他、学会開催が取りやめになる等の事情により成果発信活動がやや停滞してしまったというアクシデントはあったが、コロナ禍という人類共通のストレス下での小児期の逆境体験(ACEs)と影響防御体験(PACEs)の影響性を推定する調査(全国の大学生4,120名を対象としたweb調査)を実施し、日本の大学生においても諸外国と近似したACE体験率を確認したとともに、コロナ関連ストレスを統制した上でもメンタルヘルス(抑うつ傾向)に対するACEsとPACEsの主効果がともに存在するという新たな知見を得ることができた。また、総覧研究のなかで、ACEsとPACEsを包括する新たな発達科学的研究の動向を確認し、当該領域に関する本邦での研究の展開の基礎となるテキストの日本語版の出版に向けた準備を開始できたことも計画外の成果であったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度では、2020年度に準備を開始した追跡調査を完了し、乳児期(サンプルの一部は母親が妊娠初期より追跡を継続している)から成人期(20歳~38歳)までの縦断的分析から課題(小児期逆境体験:ACEsと影響緩和体験:PACEsの効果を検証すること)に対する一定の結論を得るための基礎的知見を得ていく。また、最終年度の目的としているアセスメントシートの開発を目指して、被虐待体験等の多重的逆境体験を有する臨床ケースについてACEsとPACEsの効果に関する探索的な検討をおこない、子ども時代にPACEsを促進することの意義について試験的な検討をおこなう。この点については、当初の研究計画にはないが、被虐待経験を有する社会的養護にある子どもたち(養護施設・里親家庭)を対象とした追跡調査の実施可能性についても探索する予定である。最終年度の2022年度には、予定どおり幅広い年齢層(18歳~70歳代)の一般人口中での検討を実施し、最終的な結論を得ることとしている。
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