研究課題/領域番号 |
20H00109
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
櫻井 芳雄 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (60153962)
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研究分担者 |
眞部 寛之 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (80511386)
廣川 純也 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (40546470)
結城 笙子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (60828309)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 記憶 / 統合 / 神経回路 / セル・アセンブリ / ラット |
研究実績の概要 |
1. 記憶課題の設定と訓練を進めた。低次→高次→統合に対応した多様な記憶課題とそこで用いる刺激等のパラメーターについて、研究分担者の結城笙子を中心に検討し決定した。視覚記憶課題、聴覚記憶課題、視覚-聴覚記憶統合課題に加え、匂い刺激を用いた嗅覚記憶課題と嗅覚-視覚記憶統合課題も設定し訓練を進めた。その結果、全ての課題について十分訓練が可能であることがわかった。 2.マルチニューロン活動記録法の改良を進めた。現在使用している方法について、研究分担者の眞部寛之を中心に更に改良し新たな方法を確立した。当初予定していたダブルドデカトロードによる脳損傷が予想より大きかったため、通常のテトロードを複数本広範囲に配置した新たなマイクロドライブを開発した。その結果、海馬と側頭皮質、視覚皮質と頭頂皮質、嗅皮質と前頭皮質それぞれの同時記録が可能となった。 3.オプトジェネティクス(光遺伝学)法の改良を進めた。研究分担者の廣川純也を中心に、これまで活用してきたアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)に加え、標識化を10倍以上促進する新規ウイルスベクターCav2-CARによる二重感染法も確立し、課題中の動物に活用できるようになった。 4.データ解析方法の改良を進めた。高性能PCの導入により、これまで活用してきた独立成分分析(ICA)に加え、深層学習(ディープ・ラーニング)や最新の可視化ソフトウエア(MicroAVSなど)などを活用し新たな主成分分析法を開発した。その結果、セル・アセンブリを構成するニューロン集団全体の振る舞いを可視化することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.記憶課題の設定と訓練がほぼ順調に進んだ。特に嗅覚記憶課題と嗅覚-視覚記憶統合課題も設定し訓練を進めたことで、対象とする記憶の多様性をさらに増やすことができた。 2.マルチニューロン活動記録法の改良も、いくつか試行錯誤があり、当初の計画の変更も必要であったが、新たなマイクロドライブを開発することができ、異なる脳部位からの同時記録が容易になったことは、今後の成果につながると考えている。 3.オプトジェネティクス法の改良も進めることができ、新規ウイルスベクターCav2-CARによる二重感染法を確立して課題中の動物に活用できるようになったことも、今後の成果につながるはずである。 4.データ解析方法の改良も進み、セル・アセンブリを構成するニューロン集団全体の振る舞いを可視化できるようになったことは、本研究課題全体にとって大きな成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
記憶課題の設定と訓練は、昨年度確立した複数の課題を活かし予定どおり進めていく。そしてそれら記憶課題中のマルチニューロン活動を、海馬と側頭皮質、視覚皮質と頭頂皮質、嗅皮質と前頭皮質それぞれの同時記録を中心に進めていく。またオプトジェネティクスの実験も開始し、記憶課題中に特定のニューロン集団を賦活あるいは抑制した際の行動変化を、課題の種類(記憶の種類)と対応させ明らかにする。さらに課題中のニューロン集団の振る舞いを解析することで、セル・アセンブリの活動と課題の種類(記憶の種類)の対応も体系的に明らかにする。
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