研究課題
生命活動にとって温度は重要な働きをしていることが知られているが、細胞活動と細胞温度の関係には未解明な部分が多い。これまでの細胞温度計測は、局所温度に応じて強度や寿命が異なる蛍光温度プローブにより行われてきたが、蛍光プローブによる間接的な計測は細胞内の他の環境変化にも依存するため、温度計測の正確さに不定性が残る。本研究では、蛍光温度プローブを用いずにラベルフリーで細胞温度を計測する手法、および、熱拡散を可視化する計測手法を開発している。細胞内の温度をラベルフリーで計測する手法として、自発ラマン散乱を用いた温度計測系の構築を進めた。チタンサファイア連続波レーザーを光源として用い、分散型分光器によりストークスラマン散乱とアンチストークスラマン散乱の両方を同時に取得可能な分光システムを構築した。また、試料の顕微計測ができる光学系を構築し、顕微ラマン分光が可能なシステムを構築した。細胞内の熱拡散をラベルフリーで計測する手法として、光回折トモグラフィによる屈折率顕微鏡を用いた計測系の構築を進めた。デジタルホログラフィ光学系の照明角度を変えられる仕組みを導入し、光回折トモグラフィの実証に成功した。また、顕微鏡に赤外光を照射できる光学系を組み込み、熱拡散の時間分解計測が可能なシステムを構築した。上記以外のラベルフリー分光手法の開発も行い、超高速フーリエ変換赤外分光法である位相制御型フーリエ変換赤外分光の実証に成功した。
2: おおむね順調に進展している
自発ラマン散乱を用いた温度計測系および、光回折トモグラフィを用いた熱拡散計測系の製作に着手し、それぞれの計測系の基盤部分の構築と原理検証に成功した。自発ラマン散乱を用いた温度計測系の開発では、実験系の設計、部品の調達、および基盤部分の製作を行い、おおむね順調に進展した。光回折トモグラフィを用いた熱拡散計測系では、光回折トモグラフィ系の製作と、光刺激の光学系の製作を行い、おおむね順調に進展した。その他の分光手法の開発においても、新しい計測系の開発に成功しており、順調に進展した。
計測系の開発を引き続き行う。自発ラマン散乱を用いた温度計測系では、水をテスト試料に用いて温度計測の原理検証を行う。光回折トモグラフィによる熱拡散計測系では、水等のテスト試料での熱拡散計測を行う。また、細胞を用いた熱拡散計測に進み、細胞内での熱拡散の定量を行う。その他の分光手法開発も引き続き行う。
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フォトニクスニュース
巻: 6 ページ: 137~141
Laser & Photonics Reviews
巻: 15 ページ: 2000374~2000374
10.1002/lpor.202000374