グラフェン等の二次元層状物質を結晶方位をそろえてファンデルワールス積層するとモアレ超格子ポテンシャルが生じる。機械的な動きによってモアレポテンシャルの位置をずらしてやれば表面弾性波によるキャリア運搬と同様にディラックフェルミオンを輸送することが可能となると予想される。この「原子層モアレ電荷ポンプ」の概念を実現すべく、動的な機構と二次元層状物質とを融合した、動的なファンデルワールスヘテロ構造を作製することを目的として実験を行った。本年度においては、MEMS素子上に原子層を転写する手法を確立すべく、ポリ塩化ビニル(PVC)を用いた原子層転写法の開発を進めた。我々の研究室では従来PVCをベースとした食品用ラップを用いて原子層を転写していたが、これをより使いやすくするために、PVC粉末と可塑剤を混ぜた液体からPVC膜を作製して転写を行った。その結果、可塑剤割合及び膜厚によって原子層転写温度が大きく変化することを見出した。これをもちいて原子層の上下反転技術の構築に成功した。
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