研究課題/領域番号 |
20H00128
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮崎 州正 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (40449913)
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研究分担者 |
池田 昌司 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00731556)
川崎 猛史 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (10760978)
水野 大介 九州大学, 理学研究院, 教授 (30452741)
吉野 元 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (50335337)
竹内 一将 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50622304)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非平衡統計力学 / ガラス転移 / ジャミング転移 / レオロジー / アクティブマター |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、シミュレーションと実験、理論解析により、ガラス転移の本質を理解することである。特に、系に流動や変形など大変形を加えた系や、生物集団のモデルであるアクティブマターを題材にとる。あえて「非平衡」という新しいパラメータを加えることで、ガラス転移の本質に迫る研究を行った。特に代表的な成果として、アモルファス固体の非線形応答とそのプロトコル依存性の解明を挙げる。 ガラス系に剪断変形をかけると、変形が小さければ弾性応答を示すが、剪断が大きくなると、応答は塑性的となり流動状態へ転移する。これは降伏転移と呼ばれる典型的な非平衡相転移である。降伏転移には弾性相から流動相へ連続的に遷移するductile転移と、破壊的かつ不連続に転移するbrittle転移に分類されるが、その統一的な理解は曖昧であった。我々は、ガラス生成のプロトコルや振動剪断の振幅を系統的に変化させることで、上記2つの転移を統一的に理解することに成功した。また構成粒子がコロイドやエマルジョンのような、明確な「大きさ」を持つアモルファス固体は、圧力変化により、流動状態から固体状態への転移、ジャミング転移を起こす。このジャミング転移点近傍における、降伏転移を解析も行った。この2つの特異点の合流地点では、降伏転移の他に、さまざまな非線形応答が階層性を持って出現する。これらを二次元コロイド系を題材にとり解析した。シアメルティング、シアシックニング、可逆・不可逆転移などを詳細に解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の研究計画に従い研究を遂行し、ほぼ想定した範囲の進展があった。一方、コロナ禍により、研究発表の機会が非常に少なかった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ジャミング系の非線形レオロジー: 昨年度に引き続き、ジャミング転移と非線形レオロジーの関係を、準静的振動シアにより明らかにする。ジャミング転移点近傍に見られる、ソフトニングとよばれる、弾性応答とも降伏応答とも異なる特異な非線形応答における、ミクロな粒子配置の変化の解明や、熱的・力学的にアニールされた系におけるハイパーユニフォーミティと呼ばれる密度揺らぎの抑制現象を解析し、代数関数的な長距離相関を特徴づける指数およびそのカットオフを特徴づける長さを、アニール温度や力学的摂動の大きさをパラメータにとり、精密な測定を行う。この他、熱的にアニールした系の非線形レオロジー、振動シア化における可逆・不可逆転移などの解明、などが主な研究計画である。 (2)アクティブマター中の非平衡揺らぎ: アクティブマターの単純な模型の実験・数値実験を通して、その相転移現象や非平衡揺らぎの解明を行う。特に、アクティブブラウン運動モデルや、Active Ornstein-Uhlenbeck Particleモデルと呼ばれる代表的なモデルを題材にとり、その非平衡相分離現象における渦運動などの特異現象を解析するほか、非平衡揺らぎを密度揺らぎや速度揺らぎの相関関数を介して解析し、その長距離相関の起源を探索する。
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